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授業科目名 遺伝医学特論
時間割番号 GLB518
担当教員名 笠井 慎也
開講学期・曜日・時限 前期・水・III 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的および概要>
染色体異常のダウン症や単一遺伝子疾患であるマルファン症候群など、遺伝性の疾患は数多い。また、遺伝性が疑われるものの、原因遺伝子座が特定されていない未診断疾患も多い。さらに、ヒトゲノムの遺伝的多様性により、多因子疾患の罹患しやすさや薬の効き方は個人で異なる。本科目では、疾患の発症メカニズムや治療についての理解を深めるために、ヒトゲノムの構造や遺伝子の機能、遺伝子多型といった遺伝的多様性など、分子生物学的な背景についての講義も行う。さらに、ゲノム医療や個別化医療の実際を理解するため、上述の疾患など例に挙げながら、染色体異常、単一遺伝子疾患、多因子遺伝子疾患、腫瘍などについて講義する。また、こういったヒトゲノムの解析方法や疾患の診断方法などについても講義を行う。
<到達目標>
遺伝医学は、分子細胞生物学の基礎知識、様々な遺伝性疾患の発症メカニズム・病態・治療など多くの知識を吸収する事が出来る一方で、本学ではこれまで系統的に学ぶ機会がなく、全てを理解するには難しい領域である。対象学生は主にバイオサイエンスコースの修士1年であり、既に研究室に所属して研究を進めているため、各自の研究に関連する下記の(1)-(6)の少なくとも一つ以上について達成することを目標とする。

(1)ヒトゲノムの構造や遺伝的多様性について理解する。
(2)解析方法・診断方法について説明出来る。
(3)染色体異常、(4)単一遺伝子疾患、(5)多因子疾患など遺伝性疾患の病態および分子生物学的基礎を理解する。
(6)発生遺伝学あるいは腫瘍遺伝学について発症メカニズムを説明出来る。
<授業の方法>
対面あるいはオンラインにより講義を行う。
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1小テスト/レポート 50  %期末のレポート内容により評価する。 
2受講態度 50  %合計15回中の出席回数により評価する。 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
疾患発症に遺伝子がどのように寄与しているか、あるいはゲノム医療に興味のある学生は受講ください。
<テキスト>
  1. 福嶋義光(翻訳), トンプソン&トンプソン遺伝医学 第2版, エルゼビア・ジャパン, メディカル・サイエンス・インターナショナル, ISBN:9784895928755,
    (絶版、Amazonなどでは購入可)

  2. 福嶋義光(日本語版監修)、櫻井晃洋(監訳), トンプソン&トンプソン遺伝医学・ゲノム医学 第3版, メディカル・サイエンス・インターナショナル, ISBN:9784815731250,
    (発売日:2025/3/28)
<参考書>
(未登録)
<授業計画の概要>
1. 遺伝医学の歴史・概要: 遺伝学、ヒト遺伝子解析の歴史について学ぶ
2. ヒトゲノムの構造: ヒトゲノムの構造や遺伝の染色体基盤、セントラルドグマ、遺伝子発現調節機構など、分子生物学的基礎を学ぶ。
3. ヒトの遺伝学的多様性: 遺伝子多型の起源や種類、人種間頻度の差異などゲノムの多様性ついて学ぶ。
4. ヒトの集団遺伝学: Hardy-Weinberg平衡、人種間差異、連鎖解析など、集団遺伝学に必要な知識を学ぶ。
5. ゲノム解析手法: 細胞遺伝学的解析、マイクロアレイや次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析、一細胞解析や空間トランスクリプトーム解析について学ぶ。
6. 染色体異常の遺伝学: 性染色体異常や常染色体異常など、染色体やゲノムの量的変化に基づく疾患の遺伝学について学ぶ。
7. 単一遺伝子疾患の遺伝学: 常染色体顕性のメンデル型遺伝形式やX染色体連載遺伝形式について学ぶ。
8. 多因子疾患の遺伝学: 複数の遺伝子要因や環境要因が関わる疾患の遺伝性について学ぶ。
9. 遺伝子疾患の発症原理: いくつかの遺伝子疾患を例に、分子生物学的、生化学的、細胞生物学的解釈を学ぶ。
10. 発生遺伝学: 先天異常・母胎環境による疾患の病態を学ぶ。
11. 腫瘍の遺伝学: 生殖細胞系列変異および体細胞変異など、発症原因の違いによる腫瘍の遺伝形式について学ぶ。
12. 診断方法・評価・課題: 出生前診断・スクリーニング、家系図作成・家族歴によるリスク評価・再発評価、遺伝情報の保護や優生学など、遺伝医学が引き起こす倫理問題について学ぶ。
13. 遺伝子疾患の治療: 遺伝子導入など遺伝子疾患の根本治療法について学ぶ。
14. 個別化医療への応用: ファーマコゲノミクスなど治療効果の個人差について学ぶ。
15. まとめ: 本講義を通した質疑応答やレポート課題の説明を行う。
<前年度授業に対する改善要望等への対応>
自発的に行った改善点:
・講義中に受講者に質問し、随時理解状況を確認しつつ進める。

前年度の授業評価アンケート結果を基にした改善点:
・授業開始時に昨年度の講義概要を提示し、事前に自ら調べて学ぶ情報を提供する。
・各講義の初めに、前回授業の復習時間を増やす。
・各講義の終わりと復習時に質問や疑義を受け付け、理解を高める。