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授業科目名 科学技術社会論
分類社会科学
時間割番号 CRAK15
担当教員名 山崎スコウ竜二
開講学期・曜日・時限 前期・木・IV 単位数 2
<対象学生>
全学
<授業の目的>
科学と技術は古来、異なる知識のタイプを示すものであるが、今日両者は融合し、科学が製作的な知の性格を強めて技術と結びつき、産業的な効率化を追求する価値観を体現している。科学技術の発展が生活を豊かにしてきた一方で、生活を脅かす場面も増える現代において、人間の活動にどのような舵取りが求められているのか。「よく生きる」ための倫理や政治が技術から切り離されてきた状況に対して、今あらためて人間の判断、行動力を培い、思慮を働かせる技術的な知のマネジメントが重要な課題となる。本講義では、科学技術がどのような人工物を作り出す必要があり、私たちの生活に活かしていくことが可能なのかを問う視点から、最新の現場における技術開発や世界的な研究動向を概観して議論する。本講義の特色として主題化する、現代に登場した人工知能(AI)、ロボットという「他者」の存在は、人間にとって新たに「人格」的なもの、機械の人間的側面を見せて楽しませてくれるとともに、その身分や扱いについて戸惑いや困難をもたらしもする。事例や理論の検討を通して、研究開発を進める技術者や科学者などの専門家、そしてユーザや市民の視点から科学技術が関係する社会問題がどのように考えられ、対処できるのかを受講者が自ら考察できるようになることを目指し、これからの社会の担い手として必要な専門職や市民の役割を議論する。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
全学共通教育科目向け
記号コンピテンシー(能力・資質)説明 
N-A共通論理的かつ柔軟に思考する力(思考)問題を細分化して多面的・客観的にとらえ、専門分野や文理を問わない幅広い知識に基づき様々な観点から考察し、結果を筋道立てて根拠を示しながら説明できるようにすることで、論理的かつ状況の変化に対して柔軟に対応できる思考力を備える
N-B共創により問題を解決する力(共創)問題設定、多様な解決方法の案出と検討、実現可能な計画の立案、計画に従った問題解決、解決方法や計画の改善などを他者と共働して行う力を備える
N-Cより良く生きるための力(福利)心身の健康を維持増進して国際社会の一員として暮らすために必要な知識技能を備え、自己と社会の理解に基づき人生設計する力を備える
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
共通
1科学技術と社会が実際にどのように関わりあっているのかを例示して説明することができる。N-B
2メディア技術に関する理解と社会課題への応用を結び付けて考え、「問い」を自ら考えて設定し、自身の考えを論述することができる。N-A
3科学技術に関する倫理への考察を含めた形で、独自の合理的な研究提案ができる。N-C
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
120%授業参加姿勢
240%レポート、プレゼンテーション
340%レポート、プレゼンテーション
合計100% 
<授業の方法>
【今年度の方針】教えるよりも、議論を中心に進めます。履修者の積極的な発言が求められます。

講義形式の座学だけでなく、受講者が能動的に参加できるようにするため、アクティブラーニングを取り入れます。具体的には、ペアワークやグループワーク、全体での話し合いや受講者によるプレゼンテーション、意見交換の場を設けます。
グループワークでは、プレゼンテーションが課題になります。ノートPCを使った資料作成がありますので、必要に応じて持参してください。チームメンバーとの共同作業があるため、協調して課題に取り組む姿勢と、作業への貢献が求められます。
受講者の状況を考慮したうえで、ビデオプレゼンテーションの作品制作が課題になる可能性があります。また、科学技術と社会の関わりを社会の中で市民と共に考える契機を作る一場面の実践として、フラッシュモブの実施、録画と公開による作品制作を課題とする可能性もあります。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
本授業では、一般的に言われていることの受け売りではなく、履修者が自ら問題そのものを自身で考え直し、問題を再設定する能力を育むことがもっとも重要です。履修後も考え続けたいと思えるような問い、課題発見を目指してください。

※講義内でグループワークを行います。欠席した場合、その課題分は自身で行うこととなりますのでなるべく欠席の無いようにお願いします。
<テキスト>
(未登録)
<参考書>
  1. 藤垣裕 子等編, 科学技術社会論の挑戦2 科学技術と社会: 具体的課題群, 東京大学出版会,
    (2020年)

  2. シェリー・タークル, つながっているのに孤独:人生を豊かにするはずのインターネットの正体, ダイヤモンド社,
    (2018年 (Sherry Turkle, Alone Together: Why We Expect More from Technology and Less from Each Other, Basic Books, 2011))

  3. 藤井直敬, 現実とは?:脳と意識とテクノロジーの未来, ハヤカワ新書,
    (2023年)

  4. デイヴィ ド・J・チャーマーズ, リアリティ+:バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦, NHK出版,
    (2023(REALITY+: Virtual Worlds and the Problems of Philosophy, David J. Chalmers, W. W. Norton and Company, 2022))

  5. ピーター=ポー ル フェルベーク, 技術の道徳化:事物の道徳性を理解し設計する, 叢書・ウニベルシタス,
    (2015年 (Moralizing Technology: Understanding and Designing the Morality of Things, Peter-Paul Verbeek, University of Chicago Press, 2011))

  6. David J. Gunkel, Person, Thing, Robot: A Moral and Legal Ontology for the 21st Century and Beyond, The MIT Press,
    (2023)

  7. Mark Coeckelbergh, Why AI Undermines Democracy and What To Do About It, Polity,
    (2024)
<授業計画の概要>
1タイトルイントロダクション
事前学習
事後学習
授業内容本授業の問題意識、目的、概要について説明する。
2タイトルSTSの営み
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容科学、技術、社会が交差する地点で分野や立場を超えて統合的に課題に対処し、新たな関係を紡ぐ人間の営みとしての科学技術社会論(STS)の展開について概観して議論する。
3タイトル人工物の政治性と道徳性
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容人工物に投影される社会の価値、規範について検討し、倫理的、法的、社会的課題(ELSI)について理解を深める。
4タイトル科学技術コミュニケーション
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容人工知能(AI)や脳科学などの先端科学技術が社会や人間に及ぼすインパ
クトを見渡し、科学技術コミュニケーションのさまざまな目的・機能、不全の原因について考え、受講者が自らワークショップ企画の立案を試行する。
5タイトルメディアと人・現実の成り立ち
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容AIやメディア技術が及ぼす影響やその人的要因、意味について、プロテウス効果として知られる分身の影響やバーチャルな人格形成などを例に考える。また「現実」とは何かをテーマに、映画などの芸術と技術の接点についても議論する。
6タイトルロボットとの共生社会
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容教育場面を中心にロボットメディアの応用事例を学び、ソーシャルロボットが社会に進出する中で人々にどのような新たな経験とつながりをもたらすのか、共生社会のあり方を批判的、創造的に検討する。
7タイトルソーシャルロボットとウェルビーイング
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容高齢化する社会の課題に対してメディアデザインの意義を考察し、ロボットを介したコミュニケーションによる人の潜在的能力へのアプローチとコミュニティデザインのあり方を議論する。
8タイトルブレインマシンインターフェイス
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集し、自ら調査したいと思う問題設定等を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容脳活動を制御するニューロフィードバックなどの方法によりAIやメディア技術が人の能力拡張や制御に関わる意味を検討する。
9タイトルロボットになる(メディアコミュニケーション実習)
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容受講者が遠隔操作で自らロボットになり、またロボットと話す体験を通して考察を深めるため、実習を行って影響を体感する。併せて、各自の問題意識を掘り下げるため、グループワークを通じてグループごとの研究テーマ選定を行う。
10タイトル予測と誘導
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容Society 5.0などで日常生活の活動から得られるデータの活用が急務とされ
る今日の状況を概観し、対話から人の特性を推定する機械学習の利用など
メディア技術を応用した解析の例示から、具体的に予測による社会構成の意味と技術倫理、人間理解に向けたデータサイエンスの意義などを議論する。
11タイトル研究開発と価値
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容研究開発で重要な価値、人間にとって重要な価値とは何かを議論するとともに、ロボットの記憶やクローン化できない唯一性を例に取り上げながら、デザイン思考による価値のエンハンスメントについてアイデアを出し合って議論する。
12タイトルデザインと倫理
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容ロボティクスなどのモノづくりと他者論や文化論との接点を検討し、メディアを介した他者との出会い方の学び直しと、対人を前提とした哲学的他者論との関係性をめぐる議論から、モノづくりやコミュニケーションを通した人間性拡張の可能性について考察する。
13タイトルアンドロイドリテラシー
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容AIやロボットが社会に入って人間に近づいた存在となる中で、人が日常のインタラクションを通して促される「汝自身を知れ」という哲学的命法の具体化を、現代社会に生きる術、アートの一つとして議論する。
14タイトルグループ発表
事前学習
事後学習
授業内容に関連する事項について参考書等を読み、各自調べるとともに、社会課題についても情報を収集して自身の研究提案を考える。
各回に教員が指示した課題に取り組む。
授業内容最終課題として全体を通してまとめた研究プロポーザル全体、またはそのビデオプレゼンテーションのダイジェスト版を各グループが対面で発表し、質疑応答と相互評価を行う。
15タイトル試験
事前学習
事後学習
グループワークを参考にして履修者が個人で自身の研究提案を考えてまとめる。
授業内容授業内容と各自のプレゼンテーションの内容に関する試験に取り組む。
<前年度授業に対する改善要望等への対応>
授業評価アンケート対象外
<備考>
授業の進み具合や履修者の反応を考慮し、スケジュールと内容に変更を加えることがある。
履修等の状況によりグループまたは個人によるビデオプレゼンテーションの作成を課題に取り入れる可能性があり、その場合に作品は授業参加者との共有を前提とする。
事前に共有を通知した課題への回答は、議論のため一部を授業内で共有してフィードバックを返す場合がある。
本授業は「関係学」と密接に連動しており、「未来学」の一部(履修者が未来人になる部分)とも関係が深い。そのため、両者を併せて受講することが望ましい。