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授業科目名 基礎材料科学
時間割番号 TAC203
担当教員名 上野 慎太郎
開講学期・曜日・時限 前期・金・IV 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的>
無機物、有機物問わず、現実の物質の持つ固有の性質である物性や、材料の示す電気的特性、光学特性、磁気特性など材料の機能性に関する特性の発現には、材料中の電子構造や材料の微細構造が深く関与している。これらを論理的に結び付け、自然界や実験室で目の当たりにする現象に化学的な解釈を与えることができるようになることが本講義の目的である。量子化学、物理学などの基礎的な知識を基に、材料の機能の根幹である材料中での電子の状態を深く考察し、理想的な材料の示す物性・特性を理解するとともに、複数の現象や因子が重なった結果現れる現実の材料の物性・特性との違いを、具体的な例や実演を通しながら学習する。魅力的な材料や最先端のデバイスを知ることで、材料化学が可能にする未来に向けたものづくりに広く興味を持ち、興味を抱いた材料について自ら進んで調査し学習する材料研究の基礎能力を養えるようにする。2年生後期の関連講義、あるいは化学実験や応用化学実験などの実験科目を通して、実践的な化学研究に向けた「橋渡し」を行う。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
工学部(~2023年度入学生)>応用化学科向け
記号コンピテンシー(能力・資質) 
AC-A専門4.化学の専門知識・技術を活用し、新素材・エネルギー・環境等の分野における問題解決に取り組むことができる。A.無機化学A1.原子、イオン、化合物、結晶、錯体の電子構造と物性との関連を説明できる。
AC-BA2.元素の性質と化合物、金属錯体の構造や分光学との関連、結晶構造と固体の性質との関連、無機生体材料、環境浄化材料について説明できる。
AC-CA3.無機工業の発展過程、天然資源利用の歴史と現状、無機化学工業製品の応用、無機化学反応を利用して様々な化学関連産業を支える資源および素材の製造プロセスを説明できる。
AC-DD.物理化学D5. 金属、絶縁体、超伝導体、セラミックス、プラスチックなどの材料とその物性について説明できる。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
AC
1原子~錯体~結晶、原子~分子~高分子の各スケールの材料において電子構造や物性の関係を説明することができる。AC-A
2金属~絶縁体の電気特性の違いを、バンド理論を用いて説明できる。AC-D
3光学特性や磁気特性と電子構造・微細構造の関係性を理解し、身近な現象やデバイス動作のメカニズムを説明することができる。AC-A
4実用的な工業材料の電子構造や微細構造と機能の関係、製造プロセスの違いが性能に与える影響、理論と現実の材料の違いが何に起因するのか推察することができる。AC-C
5様々な物性・特性を評価したデータから、重要な点を把握することができ、考察することができる。AC-B
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
110%演習課題と期末試験においてそれぞれ5%、5%で到達度の評価を行う。
230%演習課題と期末試験においてそれぞれ10%、20%で到達度の評価を行う。
310%演習課題と期末試験においてそれぞれ5%、5%で到達度の評価を行う。
430%中間レポート及び期末試験においてそれぞれ15%、15%で到達度の評価を行う。
520%主に中間レポートにおいて到達度の評価を行う。
合計100% 
<授業の方法>
・講義には基本的にスライドを用いる。事前に資料を配布するので、講義中は事前に印刷したものを持ち込み参照するか、電子デバイスによってスライドを閲覧すること。
・評価に関連して演習、中間レポート、期末試験を実施する。演習はMoodle等を活用し不定期に3回程度実施する。中間レポートでは自分の科学的な興味に沿った自由課題に取り組み、文献の調査やデータの取り扱いについて学習する。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
1年次設置の基礎無機化学、微分積分学I・II、線形代数学I・II、基礎物理化学I・II、基礎物理学Iのすべてを履修していることが望ましい。応用化学科以外の履修者はその限りでないが量子力学と化学結合論の基礎知識を有することが望ましい。
<テキスト>
  1. 平尾一之, 田中勝久, 中平敦(著), 無機化学 : その現代的アプローチ, 東京化学同人, ISBN:4807905511
<参考書>
  1. M.A.White(著) ; 稲葉章(訳), 材料科学の基礎, 東京化学同人, ISBN:4807905260
  2. 河本邦仁(編), 無機機能材料, 東京化学同人, ISBN:4807907069
  3. 田中勝久(著), 固体化学, 東京化学同人, ISBN:480790583X
<授業計画の概要>
1タイトル材料科学の魅力
事前学習
事後学習
1年次の『基礎無機化学』の講義内容について講義の前に復習することを勧める。
古典論と量子論の対比、各軌道の概念について、教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。
授業内容量子論と軌道の復習を行った後に、現実に使用されている材料に要求される特性や機能と、電子構造、微細構造などの関係について包括的な説明を行う。
2タイトル錯体と光機能
事前学習
事後学習
原子軌道について講義の前に復習することを勧める。
特に遷移金属錯体のd軌道の分裂について復習が必要。
授業内容錯体の基礎知識を学習した後に、遷移金属錯体におけるd軌道の分裂とそれに伴う光学的な性質の変化について説明する。また後半では実用的あるいは生体の中で機能する錯体について紹介する。
3タイトルπ電子の化学
事前学習
事後学習
分子軌道ついて講義の前に復習することを勧める。
ヒュッケル近似と高分子のエネルギー準位について、教科書や参考書を参照しながら復習が必要。
授業内容単結合と二重結合が交互に並ぶような不飽和化合物、共役π電子系についてそのエネルギー状態を分子軌道法によって考察していく。またそれに関連して、共役π電子系の広がりが光学的な性質の変化がどのように起こるのかを見ていく。
4タイトル【材料の電気的性質】固体材料の電気的性質
事前学習
事後学習
金属の導電現象に関して講義の前に復習することを勧める。
物質の電気伝導率を支配する要因についての復習が必要。
授業内容材料毎に非常に広い範囲で変化する電気伝導率。金属において電気伝導率がどのような因子(ファクター)によって支配されるのか、電子の微視的な運動を考えることによって導く。
5タイトル【材料の電気的性質】バンド理論と金属の性質
事前学習
事後学習
錯体や高分子に関して軌道の作るエネルギー状態について講義の前に復習することを勧める。
バンド理論に関しては繰り返しの復習が必要。
授業内容金属・半導体・絶縁体(誘電体)の電気的性質を特徴付けるバンド構造、その大元となるバンド理論について物理的・化学的にアプローチを試みる。また金属の持つ性質の起源についてバンド構造も絡めながら紹介する。
6タイトル【材料の電気的性質】半導体の性質と電子構造
事前学習
事後学習
バンド理論について講義の前に復習することを勧める。
半導体の性質を特徴づけるバンド理論に関しては繰り返しの復習が必要。
授業内容半導体は極めて重要な性質を持つ材料であり、金属・絶縁体との電気的な性質の違いについてバンド構造を用いた比較
・検討を行う。また半導体のユニークなバンド構造が形成される起源について考察していく。
7タイトル【材料の電気的性質】半導体の接合と応用
事前学習
事後学習
半導体の性質や電子構造について講義の前に復習することを勧める。
バンド構造とp-n接合によるバンドベンディングについての復習が必要。
授業内容現在の電子機器中の電子回路において極めて重要な役割を果たすダイオードやトランジスタは、欠陥を意図的に導入した外因性半導体の性質を巧みに利用した電子素子であり、その機能の起源となっている半導体のp-n接合について解説する。
8タイトル【材料の電気的性質】化合物半導体と半導体デバイス
事前学習
事後学習
半導体の性質や電子構造について講義の前に復習することを勧める。
太陽電池の動作メカニズムについての復習が必要。
授業内容欠陥を意図的に導入した外因性半導体の性質を巧みに利用した太陽電池の動作原理や、微細構造と欠陥を制御したデバイスである酸素センサーやバリスタについて紹介していく。
9タイトル【材料の電気的性質】誘電体材料の性質と構造
事前学習
事後学習
”コンデンサ”についての基本的な性質と結晶構造の基礎的な部分を講義の前に復習することを勧める。
各種誘電体の特徴と結晶構造についての復習が必要。
授業内容電気の瞬間的な充電・放出が可能な誘電体材料について、誘電体の各種応用に用いられる材料の種類やその性質の起源について、結晶構造の知識も利用しながら考察していく。
10タイトル【材料の電気的性質】圧電材料と環境調和型酸化物の開発・中間評価
事前学習
事後学習
圧電材料はその用途に適した誘電体材料を用いるので、誘電材料のについて講義の前に復習することを勧める。
圧電性の起源と結晶構造についての復習が必要。
授業内容機械エネルギーと電気エネルギーを交換することのできる材料、すなわち圧電発電や超音波の発振が可能な圧電材料について、有毒な鉛を含まない環境調和型の圧電セラミックス(酸化物)の開発について紹介する。
11タイトル【材料の化学的安定性】エリンガム図を活用した金属/酸化物の複合材料設計
事前学習
事後学習
熱力学の基礎的な部分について講義の前に復習することを勧める。
エリンガム図の活用方法について復習が必要。
授業内容金属が酸化されると金属酸化物へと変化するが、この変化を考察するには熱力学的なアプローチが有効である。熱力学の復習を行うとともに、この化学反応の平衡状態を巧みに利用して作られたエリンガム図の活用方法について学習する。
12タイトル【材料の光学的性質】レーザーポインターの中の発光材料について
事前学習
事後学習
本講義のイオンや結晶の電子構造について講義の前に復習することを勧める。
発光が起こるメカニズムやレーザーの性質についての復習が必要。
授業内容レーザーポインタの中には様々な光学素子が入っており、特にレーザー媒質である結晶に施された工夫や、発光を担う蛍光体の発光メカニズムについて掘り下げていく。
13タイトル【材料の磁気的性質】磁性材料とその磁性の起源
事前学習
事後学習
電磁気学における磁気の相互作用に関する部分を講義の前に復習することを勧める。
磁性の起源についての復習が必要。
授業内容磁石は身近な材料でありながら、その磁性の起源を理解するには量子力学の知識を必須としている。原子軌道の復習をするとともに、結晶や材料の中で磁性がどのように発現するのか、簡単に紹介する。
14タイトル【材料のプロセッシング】自然・生物から生まれたバイオミメティック材料
事前学習
事後学習
バイオミメティクスについて講義の前に予習することを勧める。
バイオミメティック材料の利用する物質間における相互作用についての復習が必要。
授業内容バイオミメティックす、バイオミミクリーなどと呼ばれる、生物や植物の創り上げた機能について、そのメカニズムを巧みに利用し人類の役に立つ材料へと応用したバイオミメティック材料について紹介する。
15タイトル【材料のプロセッシング】ナノスケールのユニークな結晶の世界・総括評価
事前学習
事後学習
熱力学の基本的な部分を講義の前に復習することを勧める。
結晶成長をはじめとする変化や反応を起こす駆動力(ドライビングフォース)について復習が必要。
授業内容基礎材料科学で学習してきた基礎的な内容について総括評価を行う。後半では界面化学や熱力学の基礎的な知識を用いて、結晶成長が起こるメカニズムを見ていき、ナノスケールでユニークな形状に制御された結晶の合成例を紹介する。
<前年度授業に対する改善要望等への対応>
授業評価アンケートで学生から出された改善要望への対応として、講義資料中に教科書のページ数との対応をできるだけ示すように改善する。
<備考>
授業の実施形態は原則として対面授業であるが、状況に応じてオンデマンド型のオンライン講義になり得る。