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授業科目名 日本文学概論(国文学史を含む。
時間割番号 EEJ211
担当教員名 大木 志門
開講学期・曜日・時限 後期・火・IV 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的および概要>
現在ではインターネットの普及によりブログやSNSなどが発達し、私たちは気軽に自身の思いを表出できる時代に生きています。しかし明治以降の近代文学の大きな問題は、他ならぬこの「私」をめぐるものでした。明治から現代までの日本の文学がこの古くて新しい「私」という問題にいかに立ち向かい、「私」という捉えがたい存在を、いかに描き出そうとしてきたかを代表的な作家の作品から概観し、またそれを可能にしてきた出版メディア等の文化的インフラの発展、あるいは「文壇」や「読者」などの共同体との関係を理解することを目指します。
<到達目標>
基礎的な文学史の知識や文学的方法の考え方を身に付けること。および文学と社会の関わり、特に様々なメディアと文学との関係について理解を深めることを目指す。
<授業の方法>
主に講義形式で行うが、各回の終わりに授業内容に関係する問題について考え、表現する課題を与える。次回はその意見に回答する形でなるべく双方向の授業を試みる。
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1小テスト/レポート 80  %授業の内容をよく理解し、それを自分の言葉で表現できるかどうかを重視する。出席不足のものはレポートを受け取ることができないので注意すること。 
2受講態度 20  %授業中の発言、リアクションペーパーの内容などから総合的に評価する。 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
作品のプリントを配布するので、それをよく読み込んでおくこと。長い作品については抜粋を配布するので、各自でなるべく作品全体に目を通しておくこと。
<テキスト>
  1. 特になし。プリントを配布する。
<参考書>
  1. 井原あや・梅澤亜由美・大木志門・大原祐治・尾形大・小澤純・河野龍也・小林洋介 編, 『「私」から考える文学史―私小説という視座』(2018年), 勉誠出版, ISBN:978-4-585-29170-1
  2. 日比嘉高, 『〈自己表象〉の文学史』(第3版2018年), 翰林書房, ISBN:978-4877374204
  3. 山口直孝, 『「私」を語る小説の誕生』(2011年), 翰林書房, ISBN:978-4877373139
  4. 梅澤亜由美, 『私小説の技法―「私」語りの百年史』, 勉誠出版, ISBN:978-4585290483
  5. 安藤宏, 『「私」をつくる―近代小説の試み』(2015年), 岩波新書, ISBN:978-4004315728,
    (その他、適宜紹介します。)
<授業計画の概要>
1、ガイダンス−近代文学における「私」と言文一致体
2、モデル小説から「私」へ−島崎藤村「並木」「水彩画家」
3、告白する「私」−田山花袋「蒲団」と「文壇」
4、「書簡体」という形式 −近松秋江「別れたる妻に送る手紙」
5、透明になる「私」−志賀直哉「城の崎にて」
6、破滅する「私」−葛西善蔵「子をつれて」
7、体験とフィクションの距離1−谷崎潤一郎「痴人の愛」
8、体験とフィクションの距離2−川端康成「葬式の名人」
9、体験とフィクションの距離3−芥川龍之介「歯車」
10、病と書くこと−北条民雄「いのちの初夜」
11、二重化する「私」−太宰治「道化の華」
12、極限状況の中の「私」−島尾敏雄「出発は遂に訪れず」
13、虚構としての「私」−三島由紀夫「仮面の告白」
14、他者としての「私」−藤枝静男「欣求浄土」
15、現代文学における「私」