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授業科目名 食と農と人口
分類・系統社会科学 社会系
時間割番号 CAS034
担当教員名 渡邉 靖仁
開講学期・曜日・時限 前期・金・III 単位数 2
<対象学生>
人口問題の経済分析に興味を持っている学生
<授業の目的>
ヒトは20万年かけて70億人を凌駕するほどに増えてきた。ところが世界では飢餓と飽食が併存している。この状態を説明するのに、次のAB二つの文がある。<A 現在の食料の生産と分配は、市場メカニズムを基本としている。だから、世界の栄養不足人口は8億人にものぼっている。><B 現在の食料の生産と分配は、市場メカニズムを基本としている。だから、世界の栄養不足人口は8億人で済んでいる。> あなたはこの二つの主張のどちらを妥当と考えるだろうか。さらに、次のCDの文がある。<Ⅽ人口が増えると、環境と資源に限りがあるので、食糧難となり、やがては人口が減る。><D人口が増えると、資源をより効率的に利用する圧力が高まるので、人口がさらに増える。>どちらが妥当なのだろうか。また、次のEFGのヒトがいる。<花卉商社を経営するEは、世界中の気候を調査しバラの特定品種の適地適作を実現して、先進国向けに適正な値段で適正に提供できる流通・販売ルートを運用するために、秒単位で仕事している><WFP職員Fは、最貧国への食糧支援のために分刻みのスケジュールで働いている。><アホウドリ生息地で著名だったある離島では、環境変化により数羽にまで減少しトリは絶滅寸前となっていた。鳥類学者Gは、その離島に住み込み、30年かけてアホウドリの個体数を300まで増やした。>EFGが直面する時間の感覚の異同をどう捉えるか。あなたはどの時間の流れに魅力を感じ、人生で選ぶだろうか。20万年かけて人口を増やしてきたヒトの、産業革命の前と後の時間の流れの感覚はどちらに近いだろうか。農業・食産業・生命産業の時間の特性との関連はどうか。本講義の目標は、人口論と歴史人口学・農業経済学・生命誌の知見を活用して、こうした考えの背景にあるものを学び、ヒトが増えてきた理由を理解し、今後の課題を検討する視点を身に付ける。
<到達目標>  到達目標とは
・多様な知識の獲得
人口転換、人口支持力などの、人口論の重要な事項を説明できる。  
・様々な学問の考え方
人口論とこれに適用する歴史人口学・農業経済学の基本的な考え方を説明できる。
・数量的リテラシー
グラフの変数間の関係を読み取ることができる。
 
・論理的思考力
人口増減を左右する要素群の因果関係を説明できる。
 
・問題解決力
 課題設定力:人口問題と食糧の配分に関する課題を明らかにし、解決すべき「問い」を立てることができる。"
<授業の方法>
講義形式で行う。随時、質疑応答、討論の時間も設ける。
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1試験:期末期 90  %食料・農業・人口問題に関する基礎的な概念の理解と応用力を問う。 
2受講態度 10  %講義中の私語、遅刻などによって、他人の学びの邪魔をしないこと 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
受講に当たっては、食料・農業・農村・人口の経済的な面に対する興味と問題意識を持っていることが必要です。
<テキスト>
  1.  
<参考書>
  1. 大田 堯 中村 桂子, 『生命誌とは何か』  , 講談社学術文庫, ISBN:978-4062922401
  2. 中村 桂子 , 『百歳の遺言 いのちから「教育」を考える』  , 藤原書店, ISBN:978-4865781670
  3. 大塚 柳太郎, ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史, 新潮選書, ISBN:978-4106037733
  4. マッシモ リヴィバッチ, 『人口の世界史』, 東洋経済新報社, ISBN:978-4492371169
  5. 荏開津典生, 『農業経済学』第4版, 岩波書店, ISBN:978-4000289177
<授業計画の概要>
1.イントロダクション 戦後経済史と人口転換論
2.食を巡る近年動向と「陥りがちなパラダイム」の意義−ファッション化する食とプラットフォーマーをもたらしたもの
3.日本の歴史人口学的知見の概要−鬼頭説を中心に  
4.人口の世界史−r戦略とK戦略、そして成長と停滞の共存 
5.農業的世界の特徴−穀物を巡る論点
6.経済発展と農業−経済成長の離陸の苗床から相対的縮小へ
7.食料の需要と供給−主食を捨てた民族の選択
8.農業生産と土地−BC過程とM過程
9.人口と食料問題−コインの表裏
10.農業の近代化とその影響−豊饒の角かパンドラの箱か
11.マルサスとボースルプ―適用要件とその時代
12.日本のムラの特徴と人口−明確な資源制約下での選択、分家は必定 江戸時代では人口の争奪戦
13.日本のマチの特徴と人口 日欧の都市観比較と人口密度に及ぼす帰結
14.文明システムの転換を検討する糸口−生命誌の導く時間と経済学の効率
15.総まとめ 試験による理解度確認
<実務経験のある教員による授業科目の概要>
保険事業の運営に携わり、保険理論を基礎としたリスク分散事業の展開に当たって、理論の適用と、その限界を踏まえた実現可能な運用ルールの策定に関与してきた実務経験がある。講義では、経済学や保険学の理論を解説するなかで、理論の有効領域と限界、理論と実践の橋渡しとなる分析視点を学生に提供する。
<JABEEプログラムの学習・教育目標との対応>
《土木環境工学科》
(A) 技術者の責務の自覚
 様々な知識を修得し、技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、および技術者の社会に対する責任を理解して、これを説明することができる。