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授業科目名 保育内容(環境)
時間割番号 160466
担当教官名 山口 進
開講学期・曜日・時限 集中・(未登録)・(未登録) 単位数 2
<対象学生>
(指定なし)
<授業の目的および概要>
幼児の生育に大きな影響を与えるのは、幼児が接点を持つ「大人の環境に対する意識と行動」である。この視点に基づき、幼児をはじめとして人間を取り巻く環境を、保育者たる大人がどのように感じ、どのように見て、どのように解釈してゆくべきかを考えるヒントを与えることを目的とする。
キー概念として、幼児にとっての環境は、大人にとっての環境そのものということを意識しながら、以下の内容を考えていく。
●大人が環境を意識することの大切さ。
幼児は、その保育者たる大人の行動により活動域が決まり、また、大人の意識や判断により接する環境に差が出てくる。その差は生育状況に大きく影響を与える。
保育者がきちんとした視点をもつことにより、幼児はおのずとそれを感じ、環境に対して自分なりの判断をくだせる可能性が生まれる。
そのために大切なキーワードは「!」と「?」である。
正しい知識を持ち、自己認識に対し積極的な保育者がかもしだす自然環境感は、幼児の明るい未来を形成する。

1、自然環境と人工環境を考える。
自然環境と作られた環境をどうみるか。日本固有の自然環境はもはや無いに等しい。日本固有の環境とはいかなるものか、われわれに何をもたらしてくれるかを考える。
さらに現在の作られた環境とはなにか。公園や路傍に見られる自然環境は何が問題なのか。その悪影響、外来種をどう生活に取り入れるか、などを考える。
2、環境は動いていることを認識する。
われわれを取り巻く環境は決して安定していない。地球の動きや、人間行動により大きく変化している。その変化を環境の変遷を知る。
変化に対する敏感かつ正確な反応は、危険予知や環境選択に役立つ。
3、自然環境を身近に作ることを意識する。
現代では自然環境の中で生活することは難しい。そこで自然環境に近いものを身近につくる工夫が必要になる。それはたとえば食物であったり道具であったり、生活そのものの意識で環境を取り戻せる。
4、環境に対する心のタフさを育てる。
日本と西洋の環境に対する大きな違いは、環境を自分自身に取り込むか、対峙するか、である。日本人の環境感のすばらしさは、自然とともに生きることである。その良さはいまでも変わらない。
しかし、現代人は自然と対峙しようとする傾向にある。自然環境に対し臆病になり、身をいかに守るかという、西洋的な考えに陥っている。
それは正しくない知識と経験の不足、さらには心の弱さが原因しているのではないか。
心をいかにタフにしてゆくか。それは幼児期の体験や保育環境に大きく左右される。
タフな心を育てるために大切なことは、均一化しないことであることを知る。
5、「!」と「?」の繰り返しが子供の心を育てる。
すぐれた絵本や科学書の基本に流れているのはつねに驚きと疑問である。
何冊かの絵本を実際に取り上げ、「!」と「?」がいかに心を動かす原動力となるかを考える。

●身近な自然を新たな視点でとらえる。
1、いまなぜ里山なのか=里山の意味を知る。
日本人にとって里山(作られた自然環境)は豊かな生活の基本であった。自然の生き物と人間が共存共栄できる唯一の環境が里山である。
なぜそれが可能なのか。今、里山は復興できるのかを学び、考える。
2、生き物は他の生き物と関係を持ちながら生活をしていることを知る。
いくつかの例を挙げて共生の様子を学ぶ。
3、生き物は環境と関係を持ちながら生活をしている。
おなじく生き物がいかに深く環境に関わりながら生きているかを見て、人間が遊離してゆく悪影響を知る。
4、共生とは何かを知る。
共生といってもいくつかのパターンがある。寄生も共生であり、利益が偏る共生もある。そのパターンを知る。
5、生物の多様性はなぜ必要かを知る。
共生の基本となる生物の種。その強いつながりが今の地球環境を保っている。その様子は、蹴鞠で説明できる。「絶滅」とは何を意味するのか。絶滅が私たちにおよぼす影響は計り知れない。ましてやこれからの地球に
6、環境の多様性はなぜ必要かを知る。
生物が多様であるためには環境が多様であることが大前提である。地域開発や環境破壊が及ぼす影響は、地域にとどまらず、地球全体に大きな影響がある。個人で出来る多様な環境作りを提案する。
●世界で見てきた幼児を考える。
実際に撮ってきた写真を使用して、日本の幼児との差を考える。おそらく世界一軟弱なのが日本の子供たちであろう。
なぜそうなったのか?できれば討論形式で意見を交わしたい。
●地球の動きと日本の環境との関係を知る。
1、日本はヒマラヤに助けられて砂漠化を逃れた。
このような面白い現象をとりあげ、映像を交えて、日本の環境が、日本だけの範囲で決められているのではないことを知る。毎日見る気象情報の中にも、そのヒントは隠されていることを知る。
<授業の方法>
●気づく、感じる、考える ことを最重要点とする。
●基本は「?」と「!」の繰り返しである。
1、豊富な写真と映像、さらに実物などを用いて、実体験をしながら講義をする。
プロジェクターとスクリーンを準備してください。
2、野外で私が考案した『生態しりとりゲーム』を実践する。
これにより、自然に共生の仕組みや生物のかかわり、自然環境の見方が身につく。
近年、環境生態系の研究は進み、さまざまな新しい生態などがわかり始めた。最新の研究報告なども織り交ぜて講義をしたい。
<成績評価の方法>
簡単な択一的なペーパーテストを考えています。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
日本の子供は大人によってだめにされている。この傾向を押しとどめられるのは保育者の力です。
そのためには保育者の自己認識がもっとも必要であり、均一的な考えや行動を避けるように努力してください。
<テキスト>
  1. 特にありませんが、簡単なものはこちらで用意します。
<参考書>
  1. 国立信州高遠少年自然の家 生活体験プログラム開発委員会, 「少年教育に必要な生活体験の理論と実際」
<授業計画の概要>
1,2回目(7月2,3日) 教室内での講義。
3回目(7月9日)教室内での講義。
4回目(7月10日)野外での講義。