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授業科目名
生物学
担当教官
横田 貞記
時間割番号
単位数
履修年次
期別
M000061 2 1 通期
[学習目標]
一般目標(GIO)
 今日,われわれを取りまく世界の様々な現象を理解し解釈しようとするとき,生物科学
(bio-science)の知識が重要な核となりつつある。その中心をなす学問は細胞生物学で
ある。細胞生物学は細胞が働くしくみを明らかにしようとする。生物の基本単位である細
胞の営み−細胞内の様々な分子が共同して,刺激に応答し,物質を取り入れ,成長分裂す
るシステムをつくり上げるはたらきを理解し,基礎医学および臨床医学を学ぶ上で必要な
細胞レベルの基礎的知識を修め,生命現象を細胞生物学的に解釈できる能力を身につける。
行動目標(SBO)
1)知   識
1.光学顕微鏡および電子顕微鏡でみえる細胞および細胞小器官の構造を説明できる。
2.タンパク質の構成単位,タンパク質の構造と機能との関連を説明できる。
3.DNAの構成単位,DNAの複製機構,DNA修復の機構を説明できる。
4.DNAからRNAへの転写機構,RNAからタンパク質への翻訳機構を説明できる。
5.染色体の構造,遺伝子の発現とその調節機構を説明できる。
6.細胞小器官の存在理由,細胞小器官への物質の選別輸送の意味と機構を説明できる。
7.細胞の情報伝達の原理と様式,関連タンパク質の作用機構を説明できる。
8.3種の細胞骨格を構成するタンパク質,それら細胞骨格の構造と機能を説明できる。
9.細胞の分裂の意味,有糸分裂の機構,減数分裂の意味を説明できる。
10.細胞周期調節の分子機構,多細胞生物の細胞数調節,プログラムされた細胞死の意味を説明できる。
2)技   能
1.遺伝子試験による健康診断,食品の遺伝子操作,新薬開発などの利便性と危険性に関して
基本的な判断を下し,そのバランスを考慮できる。
2.病態を細胞レベルで総合的に理解し,診断と治療に対して知識を利用できる。
3)態   度
3.細胞が環境や化学物質などの外部刺激に応答する原理を応用して,薬剤や環境の生体に及
ぼす影響を細胞レベルで理解し,その対処を考えることができる。
4.ガン発生の分子機構を理解し,その治療にその知識を応用できる。
[授業計画]
講義の計画
1.顕微鏡下の細胞
1)細胞小器官の種類とその進化的考察,2)原核生物と真核生物違い,3)細胞の分子レベル
の構成成分,4)生命の基本単位である細胞の総合的理解,5)単細胞生物と多細胞生物
2.タンパク質の構造と機能
1)アミノ酸の性質,2)アミノ酸配列とペプチド骨格,3)α−ヘリックスとβ−シート,
4)ポリペプチドの折りたたみとタンパク質の立体構造,5)タンパク質のサブユニットと
結合部位,6)酸素タンパクの機能,7)タンパク質のリン酸化と脱リン酸化,8)GTP
結合タンパク質,9)モータタンパク質
3.DNA
1)遺伝物質としてのDNA,2)DNAの構成単位,3)DNA複製の機構,4)DNA修復
の機構
4.DNAからタンパクへ
1)DNAからRNAへの転写機構,2)真核生物の遺伝子(イントロンとエキソン),3)
RNAスプライシング,4)RNAからタンパク質へ(翻訳のしくみ),5)タンパク合成の
開始点と終止点,6)タンパク質の選択的分解,7)RNAワールド
5.染色体と遺伝子調節
1)真核生物のDNAと染色体,2)ヌクレオソ−ムとクロマチンの構造,3)クロマチンの
凝縮度と遺伝子発現,4)細胞の分化と遺伝子発現の調節,5)遺伝子調節タンパク,6)細
菌の遺伝子調節,7)真核生物の遺伝子調節,8)細胞の分化と調節タンパク
6.細胞内区画と輸送
1)細胞内化学反応の隔離=区画化(細胞小器官)の意味,2)細胞小器官の進化的考察,
3)細胞小器官へのタンパク質選別輸送と選別シグナル,4)小胞輸送,5)分泌タンパク質
の修飾(小胞体とゴルジ体の機能),6)細胞の飲食作用
7.細胞の情報伝達
1)細胞間シグナル伝達の原理と様式,2)イオンチャネル連結型受容体による伝達,3)細胞
内シグナル伝達と分子スイッチ,4)G−タンパク連結型受容体,5)アデニルシクラーゼ−
環状AMP−Aキナーゼ経路,6)ホスホリパーゼC−イノシトールトリスリン酸−カルシウ
ムイオン経路,7)カルモジュリンとCaMキナーゼ,8)ジアシルグリセロールとC−キナ
ーゼ,9)酸素連結型受容体=チロシンキナーゼとGTP結合タンパク(Ras)の活性化,
10)細胞内シグナルカスケードの意味
8.細胞骨格
1)中間径フィラメントの構造と機能,2)微小管の構造と機能,微小管の動的不安定性と
GTPの加水分解,3)モータタンパクと微小管,繊毛と鞭毛の運動,4)アクチンフィラ
メントの構造,5)アクチンフィラメントと結合タンパク,6)細胞の運動とアクチンフィ
ラメント,7)収縮装置の分子構造,8)筋の構造と収縮機構
9.細胞分裂
1)細胞周期の概要,2)有糸分裂の機構,3)ラミンと核膜の分散と再形成,4)細胞質
分裂,5)減数分裂,6)二価染色体
10.細胞周期の調節と細胞死
1)細胞周期のチェックポイント,2)サイクリン依存性タンパク・キナーゼ(Cdk),
3)M期促進因子(MPF),4)CdKの調節,5)細胞周期の停止とCdk阻害タンパク,
6)Go期と細胞周期調節系の分解,7)多細胞生物の細胞数の調節,8)成長因子,9)細
胞の老化,10)プログラムされた細胞死,11)がん遺伝子
[評価基準]
 出席率,授業時間中の小試験の結果,および前期後期期末試験の結果をもって評価する。
 追試はしない。講義を3分の1以上欠席すると期末試験の受験資格はない。
[教科書]
  1. Albert B, et al. 中村桂子他訳, Essential 細胞生物学, 南江堂, ISBN:4-524-21781-9,
    (必ず持参して授業を受けること)

  2. Essential Cell Biology, Graland Publishing, ISBN:0815320450,
    (英語の読める学生にはお勧め。上記の訳本とページが一致している。英語を読むのが面倒な学生には必要ない)
[参考書]
  1. 標準細胞生物学, 医学書院, ISBN:4260100688
  2. 医学を学ぶための生物学, 南江堂, ISBN:4524215395
  3. 細胞の分子生物学, 教育社(ニュートン・プレス社), ISBN:4315513318,
    (Essential細胞生物学の上級編)

  4. Cooper GM, The Cell. A Molecular Approach, Oxford University Press
  5. Fawcett D, The cell, Saunders