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授業科目名
担当教官
生物工学実験
三村 精男/他
時間割番号
単位数
コース
履修年次
期別
曜日
時限
265690 3 AF 3 後期 月/火/水/木/金 III-2〜IV-2/III-2〜IV-2/III-2〜IV-2/III-2〜IV-2/III-2〜IV-2
[概要と目標]
 生物の能力を利用して人類に利益をもたらす生物工学では、DNAを中心として動いている細胞の生化学を基本に、応用のために実に多くの知識と技術が求められる。本実験では、「生物の持つ能力を利用して人間の役に立つモノを効率よくつくる」という生物工学の原点に立ち返り、植物および細菌の力を借りて有用物質生産を行う。この過程で行う細胞培養、遺伝子クローニングなどの技術を「手段」のひとつとして身につけることも重要であるが、目的達成のためにいかなる戦術を用いてアプローチするかを考えることに主眼をおいている。卒業研究前の最後の学生実験であることから、研究の組み立て方、考え方を身に付けることを目標としている。
[必要知識・準備]
 本実験の履修には順序指定科目として応用真核細胞学の単位取得が必要である。また、化学実験、生物化学実験、培養工学実験、微生物学実験を経て基本的な実験技術・知識は取得しているものとして講義を行うので十分に復習しておくこと。なお、培養工学、遺伝子工学、分子生物学、酵素工学等、生物の能力を「利用」するにあたり必要な学問の基礎知識を必要とする。配布するテキストはあえて下調べが必要なように構成してあるのでよく予習してくること。
[評価基準]
 すべての実験を通して行って理解できるようになっているので遅刻、無断欠席は大きな減点となることを覚悟されたい。学生実験であるので実験の「流れ」は組み立てられているがなぜそのようになっているのか(論理的に)、目的を達成するためにはどのように実験を行うのが効率的であるのか、常に「頭を使って」実験が行えているかどうかを重視する。実習時間中の取り組み方は無論のこと、全実験終了後に課すレポートの内容により評価を行う。
[教科書]
  1. 講義初日に「生物工学実験テキスト」を配布する。
[参考書]
  1. ISBN:4563077585
    (R.W.オールド、S.B.プリムローズ共著 「遺伝子操作の原理」 培風館刊 (社)日本生物工学会編 「生物工学実験書」 培風館刊)
[講義項目]
1.クローン化キトサナーゼによるキトオリゴ糖生産
 エビ、カニ、昆虫など節足動物の外皮の構成成分として知られるキチン、キトサンはセルロースについで地球上に多く存在するバイオマスといわれているがこれまではほとんど利用されていなかった。近年になって食物繊維としての利用や分解産物であるキトオリゴ糖の抗菌活性などが注目されている。
 本実験では土壌より分離したキトサナーゼ(キトサン加水分解酵素)生産菌よりキトサナーゼ遺伝子をクローニングして大腸菌に導入・発現させ、生産したキトサナーゼを用いてキトオリゴ糖を生産するまでの過程を通じ分子生物学的・遺伝子工学的アプローチの基本を学ぶ。

2.植物培養細胞による坑酸化物質生産
 コガネバナ(黄金花)はその根を乾燥させたものが漢方のオウゴン(黄岑)として用いられるシソ科の植物である。近年、その薬効成分として、コガネバナ細胞の生産するフラボノイド化合物の持つ坑酸化作用が注目されている。
 本実験ではコガネバナの根より誘導したカルスを培養し、増殖したカルスから得た細胞抽出液の坑酸化活性を測定するとともに活性成分の部分同定を行う。この過程を通じて培養工学的アプローチによる物質生産の基本を学ぶ。