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授業科目名
担当教官
真核細胞学
三村 精男
時間割番号
単位数
コース
履修年次
期別
曜日
時限
265675 2 AF 2 後期 IV
[概要と目標]
 本講議は高等真核生物のバイオテクノロジーの基礎的な知識を習得し、後期の「動物細胞工学」における応用工学に継続した年間講議として実施する。高等真核生物を応用するバイオテクノロジーは「細胞の増殖と分化」現象を基礎としている。動物細胞の大量培養による有用なペプチドの生産から遺伝子治療や胚操作によるクローン動物、組織・臓器再生、細胞の再分化による育種と増殖などに応用されている。高等真核生物は個体としては本来「多細胞生物」である。高等真核生物の個体を構成する細胞は、単独状態で生活する微生物とは異なった特徴がある。高等真核生物の細胞は多種多様であり、多くの細胞の機能が有機的に関連して、一つのシステムを形成している。このシステムを理解し、「多細胞生物」の細胞の性質に立脚した工学を構築する必要がある。
 この講議では、「多細胞生物」の細胞の有機的つながりとして「細胞の社会性」を理解する。
[必要知識・準備]
 高等真核生物に関する予備的勉強は必要としない。しかし、これまでの講議で勉強した微生物学、培養工学、生物化学などの基礎知識が重要である。高等真核生物のバイオテクノロジーは、微生物などの原核生物のバイオテクノロジーが基礎になっていることを理解して準備して下さい。生命科学の目覚ましい発展を解説した文庫、新書等の書籍が多く出版されているから、こうした書籍を出来るだけ読んでおけば講議が楽しくなる。生命科学に関する文庫、新書は私のところにほとんど揃えてあるので、興味のある学生は相談にきて下さい。
[評価基準]
 講議の最後の10分間を使って、毎回小さな高等真核細胞やバイオテクノロジーな関する質問をいたします。これは質問に対する回答の記述によって、君達の考える力を養成するのが目的です。試験ではありませんが成績の参考にいたします。定期試験では講議に関する内容のレポート提出によって成績の評価をいたします。
 出席は厳密に取ります。
 なお、この科目は生物工学実験の履修順序指定になっています(学生便覧参照のこと)。
[教科書]
  1. 大石道夫(監修), 動物細胞培養技術と物質生産, シーエムシー出版, ISBN:4-88231-772-9
    ( 上記の教科書の他に、OHPの原稿を配付いたしますから、これを切り貼りして、講義の進捗に合わせて各自ノートを作って下さい。)
[参考書]
  1. ISBN:4621045032
    ( 遠山 益編著「図説細胞生物学」(丸善)  多田富雄著 「生命の意味論」(新潮社)、多田富雄著「免疫の意味論」(青土社))
[講義項目]
 1.高等真核細胞培養のバイオテクノロジーの目的と生命工学産業における位置付け
 2.高等真核細胞の構造と機能
 3.高等真核細胞の特徴(主として原核細胞と微生物細胞との相違)
 4.高等真核細胞の増殖、分化、脱分化(血液細胞、骨髄造血幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)など)
 5.高等真核細胞の社会性(1、細胞の形づくる社会と我々の社会の類似性)
 6.高等真核細胞の社会性(2、情報伝達物質としてのサイトカインとはどのような物質か?)
 7.高等真核細胞の社会性(3、サイトカインとカドヘリンの特徴について)
 8.高等真核細胞の社会性(4、合の子動物キメラはなぜ可能なのか)
 9.細胞の自己認識と排他性(免疫現象と自己・非自己の識別)
10.細胞の老化と寿命と死(アポトーシスとネクローシス)
11.細胞の分裂寿命の喪失とガン化(発ガン2段階説とガン関連遺伝子)
12.細胞社会の情報伝達の仕組みと会話する物質としてのサイトカイン
13.情報受容リセプターとサイトカインネットワーク(多田富雄教授のスーパーシステム)
14.高等真核細胞の産業的応用(サイトカイン生産を例にして)
15.21世紀の生命科学の発展と倫理問題(我々が社会人として考えなければならないこと)

  毎回トピックスとして、実際の生命科学の研究の話題や産業技術について解説し、高等真核細胞の工学への理解を深めるようにする。