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授業科目名
担当教官
基礎物理化学
小宮山 政晴
時間割番号
単位数
コース
履修年次
期別
曜日
時限
256230 2 J 1 後期 II
[概要と目標]
 物質やエネルギーの循環の理解は、循環システム工学科での学習目標の一つの柱である。本講義ではこれを化学の観点から理解するための基礎を学ぶことを目的とする。すべての物質は原子からなっており、原子が複数個あつまって分子を形成し、分子が多数個あつまって気体や液体を構成する。本講義ではこのような物質の成り立ちを順に追いながら、各段階での系(システム)の化学的記述方法を理解してゆく。原子の段階では、原子の構造とその化学的性質との関連ならびに核反応とその応用について学ぶ。分子のレベルでは、化学結合の種類とその成り立ちについて理解する。そしてこれらが多数あつまった、気体や液体などの状態を記述する熱力学へと展開する。熱力学は、その名前があらわすように、系(システム)のエネルギー関係を記述する、非常に汎用性の高い学問分野である。その基礎的理解が本講義の最終目標である。
[必要知識・準備]
 高校での化学B、物理Bの履修を前提とするが、それらの知識は必ずしも必須ではない。むしろそれらの知識が必要となったときに、高校の教科書を開いて自分で学習しようとする態度の方が必須である。
 本講義では、授業内容を演習問題を通して理解することを方針としており、授業時間の関係からほとんどの演習問題は宿題として出題される。演習問題を自分の力で解く意志があるかどうかが本授業履修の要である。
 オフィスアワー(教官室:教育人間科学部S号館111-3室)は金曜日V限とする。本授業の内容および演習問題について質問のある学生の来訪を歓迎する。
[評価基準]
 授業内容の理解度によって評価する。出席は、授業の自己(教官)評価のために常になんらかの形でとってはいるが、評価の基準としては使用しない。したがって、授業の内容が理解できる限り授業に出席する必要ないが、実際には授業に出席せずに本科目の単位が取れることは稀である。具体的な評価方法は、授業時間中に行う豆テストおよび宿題約50%、試験(中間、期末)約50%である。試験には豆テストならびに宿題で解いた問題の変形が多い。したがって、上にも述べたように、演習問題を自分の力で解いたかどうかが本授業単位取得の要となる。
[教科書]
  1. 長谷川正知、斎藤篤義、本岡達、曽谷紀之、姫野貞之, 「理科系学生のための基礎化学」, (学術図書出版社), ISBN:4-87361-303-5
[参考書]
  1. 「基礎化学」, (化学同人), ISBN:4759808035
    (使用教科書と同レベルの、大学化学の入門書。学習者によっては、使用教科書よりも記述がわかり易いかもしれない。)
  2. ・磯直道、上松敬禧、真下清、和井内徹, 「基礎物理化学」, (東京教学社), ISBN:4-8082-3034-8
    (同じく大学化学の入門書であるが、より高度。JSでは将来理系を専門としようとする人向き。)
  3. ・石田愈, 「熱力学-基本の理解と応用」, (培風館), ISBN:4-563-04277-3
    (数式をほとんど使わない、これまでになかったタイプの熱力学の教科書。JSの学生には、基礎物理化学を履修した後、さらに熱力学の理解を深めるための絶好の参考書として薦める。)
  4. ・ムーア、アトキンス、バーロー、カステラン、アルバーティ, 「物理化学」
    (いずれも東京化学同人から翻訳・上梓されている、米国の著名な物理化学の教科書。通常化学系学部3年生の授業で使用されることが多い。将来化学を専門とする人向きであるが、いつまでたっても参考書としての価値を失わない。)
[講義項目]
1.循環型社会における化学の重要性についての説明、ならびに本授業の概要
2.原子の電子配置構造を原子スペクトルの解釈ならびに簡単な量子力学により復習、理解する
3.原子核反応について学び、その応用としての核分裂、核融合、年代測定等を学ぶ
4.化学結合を分子軌道法の観点から検討し、分子の構造を決める因子を理解する
5.分子の集合体である気体の性質を分子運動論により理解し、また状態方程式により記述、解釈する
6.物質や状態の変化をエネルギー的にマクロに捉える手段として、熱力学を導入する
7.第1法則の概略を理解し、エンタルピー、PV仕事などの概念を学ぶ
8.化学反応における第1法則の応用(Hessの法則、生成熱、燃焼熱等)について学ぶ
9.第2法則の概略を理解し、エントロピーの概念を学ぶ
10.自由エネルギーの概念を導入し、平衡の条件を理解する
11.化学平衡を熱力学的に理解し、化学反応における熱力学の意義を理解する
12.熱力学(平衡論)では捉えられない化学反応の一面を理解するために、反応速度論(速度論)を導入する
13.反応速度論における活性化エネルギーの重要性を理解し、その制御方法としての触媒の役割を理解する
14.光化学反応を理解し、また光を利用した分析方法についても学ぶ
15.酸化還元反応の電極電位と自由エネルギーとの関連を理解し、エネルギー変換装置としての電池(一次電池、二次電池、燃料電池)について学ぶ