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授業科目名 基礎無機化学
時間割番号 TAC105
担当教員名 上野 慎太郎
開講学期・曜日・時限 前期・金・II 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的>
すべての元素を対象として扱わなければならない無機化学に関連する基礎知識と考え方の基礎の習得を目的とする。特に、基礎無機化学においては電子構造を学習の中心に据え、大学レベルの無機化学の専門知識を習得するのに必要な量子の概念を新たに導入する。量子としての電子が単独の原子やイオンにおいてどのように振る舞うか考察することにはじまり、化学結合を有する分子、化合物、結晶、錯体などの複数の原子が関与する物質や材料中での電子の振る舞いの変化と、それに伴う物性の変化、そして無機材料の持つ代表的な機能の起源を理解する。最終的には、電子状態から機能を推察する、あるいは観察・観測された物性や特性から電子状態との関係を考察するための化学的考察力を身につける。また化学結合の形成に関連して、中和反応、酸化還元反応などの反応において、結合性や反応性を決定する電子に関する相互作用を理解する。このように単独原子または複数の原子が関与する際の電子構造という観点から基礎無機化学を理解することにより、次に学ぶ、より専門的で高度な無機化学を始めとする他の学問の基盤となる考え方を構築し充分に活用できるようにする。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
工学部>応用化学科向け
記号コンピテンシー(能力・資質) 
AC-A専門4.化学の専門知識・技術を活用し、新素材・エネルギー・環境等の分野における問題解決に取り組むことができる。A.無機化学A1.原子、イオン、化合物、結晶、錯体の電子構造と物性との関連を説明できる。
AC-BA2.元素の性質と化合物、金属錯体の構造や分光学との関連、結晶構造と固体の性質との関連、無機生体材料、環境浄化材料について説明できる。
AC-CA3.無機工業の発展過程、天然資源利用の歴史と現状、無機化学工業製品の応用、無機化学反応を利用して様々な化学関連産業を支える資源および素材の製造プロセスを説明できる。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
AC
1・量子化学的な考え方を軸に単独で存在する原子、イオンにおける電子構造を説明できることAC-A
2・量子化学的な考え方を軸に複数の原子が関与する分子、化合物、結晶、錯体における化学結合・立体構造や電子構造を説明できることAC-A
3・無機化合物の関与する酸・塩基の反応や酸化還元反応などの化学反応について説明できること。AC-B
4・無機材料の電子構造と物性・諸特性の関係を説明・考察・推察できることAC-C
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
140%主に中間試験及び期末試験においてそれぞれ20%で到達度の評価を行う。
220%主に中間試験及び期末試験においてそれぞれ10%、10%で到達度の評価を行う。
320%主に期末試験において到達度の評価を行う。
420%主に期末試験において到達度の評価を行う。
合計100% 
<授業の方法>
・適宜スライドを用いた講義を行う。スライドを用いる場合には事前に資料を配布するので、講義中は事前に印刷したものを持ち込み参照するか、電子デバイスによってスライドを閲覧すること。
・講義内において特に重要な点に関してできる限り演習を行い、その場で解説を行う時間を取る。
・試験については少なくとも中間試験と期末試験の2回を実施する。それぞれの過去問は学期初めにアップロードするので、各自自習の際に補助的に用いることができる。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
高校までの化学全般の知識は必須である。物理全般、数学全般の知識が理解に必要であり、特に物理においては物体の運動やエネルギー、波動に関する知識、数学においては微分・積分の知識を使用する。毎回指定される範囲の教科書の予習を必要とする。
<テキスト>
  1. 平尾一之, 田中勝久, 中平敦(著), 無機化学 : その現代的アプローチ, 東京化学同人, ISBN:4807905511
<参考書>
  1. 福田豊・海崎純男、北川進、伊藤翼(編), 詳説 無機化学, 講談社, ISBN:406153372X
  2. 金折賢二(著), 量子化学 : 基礎から応用まで, 講談社, ISBN:4065133300
  3. 潮秀樹著(著), よくわかる量子力学の基本と仕組み : 量子力学入門と固体物理、電子工学への応用, 秀和システム, ISBN:4798009199
<授業計画の概要>
1タイトル【イントロダクション】量子化学の導入(波動・電子と物性)
事前学習
事後学習
高校化学の原子の構造について、講義の前に復習することを勧める。
古典論と量子論の対比について、教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容高校化学における古典論の考え方と大学で学ぶ量子論に基づく光や電子のイメージを対比させながら説明する。また原子や分子の持つ電子構造についてのイントロダクションを行う。
2タイトル【電子の持つ波動性】量子化学に基づいた原子の電子構造(Bohrモデル~古典論から量子論へ~)
事前学習
事後学習
前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
光の二重性・Bohrモデルについて教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容光の二重性を取り上げ量子の概念の理解を試みるとともに、原子モデルと水素の発光スペクトル (Bohrモデル) に見られる量子性について解説する。
3タイトル【電子の持つ波動性】量子化学に基づいた原子の電子構造(電子の波動性とシュレディンガー方程式)
事前学習
事後学習
微分・積分の復習をしておくとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
特にBohrモデルに関するエネルギーの計算やシュレディンガー方程式は重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容Bohrモデルを用いたエネルギーの計算を習得する。またそこから発展して物質波の概念および1次元の箱の中の電子についてのシュレディンガー方程式について解説する。
4タイトル【電子の持つ波動性】量子化学に基づいた原子の電子構造(シュレディンガー方程式とエネルギー)
事前学習
事後学習
微分・積分の復習をしておくとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
特にシュレディンガー方程式は重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容シュレディンガー方程式と波動関数の意味について議論し、電子の発見確率密度や波動関数の規格化などについて解説する。またシュレディンガー方程式を2次元、3次元に拡張することを試みる。
5タイトル【単独原子に関する電子構造】量子化学に基づいた原子の電子構造(原子軌道の形状と量子数)
事前学習
事後学習
シュレディンガー方程式の復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
特に水素原子の原子軌道は最も重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容水素原子の持つ電子の原子軌道について、その原子軌道の形状と各量子数の対応について学習し、原子中に存在する電子のエネルギー状態について考察する。
6タイトル【単独原子に関する電子構造】量子化学に基づいた原子の電子構造(原子軌道と電子配置)
事前学習
事後学習
原子軌道の復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
特に原子軌道と電子配置は重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容水素原子の持つ電子の原子軌道について、その原子軌道の形状について動径波動関数、動径分布関数など詳しく見ていく。後半では電子配置について電子の満たすべき3つのルールとともに解説していく。
7タイトル【単独原子に関する電子構造】周期律とイオン
事前学習
事後学習
電子配置の復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
化学結合の種類と性質の相関性は無機材料の機能を理解するために重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容電子配置を基にイオンの生成や、イオン化エネルギー(電子親和力)、電気陰性度などについて学習する。後半では5つの化学結合についてそれぞれの特徴を比較し、化学結合の種類と物質の持つ性質との相関性を考える。
8タイトル【複数の原子に関する電子構造】水素分子と電子構造・中間評価
事前学習
事後学習
これまでの電子の波動性、単独原子に関する電子構造の範囲を総復習して中間評価に臨むこと。分からなことがあれば事前に質問をすること。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
共有結合の分子が持つ電子構造は有機化学と共通して重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容電子の波動性及び単独原子に関する電子中間評価を行う。後半では等核二原子分子である水素分子(H2)を取り上げ、分子軌道と各軌道のエネルギーについて解説していく。
9タイトル【複数の原子に関する電子構造】等核二原子分子と電子構造
事前学習
事後学習
水素分子の分子軌道を復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
共有結合の分子が持つ電子構造は有機化学と共通して重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容水素分子(H2)の分子軌道とエネルギーについて復習した後、水素分子(H2)以外の等核二原子分子(A2)についてより複雑な分子軌道と各軌道のエネルギーについて解説していく。
10タイトル【複数の原子に関する電子構造】化合物の電子構造と混成軌道
事前学習
事後学習
同核二原子分子の分子軌道を復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
後半の混成軌道は有機化学でも重要であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容等核二原子分子(A2)について復習した後、異核二原子分子(AB)や水(H2O)などの化合物の分子軌道やエネルギーについて違いを見ていく。後半は有機化学でも重要となる混成軌道の概念を解説し、分子の立体構造との関係を見ていく。
11タイトル【複数の原子に関する電子構造】化学反応(酸塩基・酸化還元)と形式電荷・酸化数
事前学習
事後学習
イオン結合について復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
形式電荷と共鳴構造は有機化学でも重要な概念であるため教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容ルイス構造式の書き方と形式電荷や酸化数について学習する。また分子の共鳴構造と電荷分布など化学反応を理解する上で重要なポイントについて解説する。
12タイトル【複数の原子に関する電子構造】金属錯体の電子構造と光学特性
事前学習
事後学習
原子軌道について復習をするとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
d軌道の分裂について教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容無機化学において重要な金属錯体の形成と、その電子構造及び光学特性について簡単に紹介する。
13タイトル【複数の原子に関する電子構造】結晶の電子構造とその性質(結晶の種類と構造)
事前学習
事後学習
高校の教科書などで学習した結晶の範囲を復習するとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
結晶構造に関連する用語を理解し、各結晶構造について教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容結晶の定義や無機で頻出する結晶構造の紹介、結晶構造に関する基礎知識を学習し、構成原子の違いによって物質の性質がどのように変化するか見ていく。またボルンハーバーサイクルによって結晶の安定性に関与する格子エネルギーを見積もる。
14タイトル【複数の原子に関する電子構造】結晶の電子構造とその性質(バンド理論と電気特性)
事前学習
事後学習
分子軌道論を復習するとよい。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
バンド理論は無機材料の機能を理解する上で特に重要であるため、教科書や参考書を参照しながら繰り返しの復習が必要。事前配布の演習問題に挑戦してもよい。講義後に次回の範囲を指定する。
授業内容バンド理論の導入と、化学的アプローチ・物理的アプローチによるバンド形成のメカニズムについて簡単に解説していく。またバンド構造がもたらす材料の性質や機能の一部について紹介する。
15タイトル【電子構造と物性・機能性】無機材料の持つ機能(電子構造と諸特性)・総括評価:まとめ
事前学習
事後学習
これまでの電子の波動性、単独原子に関する電子構造の範囲を総復習して中間評価に臨むこと。分からなことがあれば事前に質問をすること。前回講義で指定された教科書の範囲について、事前にチェックすることを勧める。
本講義は2年次前期に開設されている「無機化学」、「基礎材料科学」に深く関わるため教科書レベルの理解は必須である。教科書を読んで理解できない部分は質問するなどして今のうちに身に付けておくこと。
授業内容基礎無機化学で学習してきた基礎的な内容について総括評価を行う。後半では無機材料の機能とこれまでに学習した電子配置、軌道、化学結合、結晶構造などとの関係や機能を向上させるため材料に施された工夫などを紹介する。
<備考>
授業の実施形態は原則として対面授業であるが、状況に応じてオンデマンド型のオンライン講義になり得る。