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授業科目名 公共経済学
時間割番号 LSS225
担当教員名 渡邉 靖仁
開講学期・曜日・時限 後期・金・II 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的>
この講義では、公共部門の経済活動・政策の存在意義や経済への影響に関する基礎的な理論を、農業問題など実際の経済問題を参照しながら学びます。講義の9割は、ミクロ経済学の基本的なトピックである市場の失敗とその対処法の論点を扱い、余剰分析による政策評価を理解できるようにします。そののち、必需性が高い一方で最高の贅沢品の要素をも併せ持つ食料・医療を例に、その直面する課題と対処法について、実際の政策展開を案内し、その評価の視点を理解できるようにします。
・関連する授業
2年生前期に配当されているミクロ経済学の知識を前提として講義を行います。3年生後期の計量経済学では、本講義の知識を前提に議論と実習を行います。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
生命環境学部>地域社会システム学科向け
記号コンピテンシー(能力・資質)説明 
SS-A専門経済学の基礎と発展経済活動の仕組みや市場の役割を理解し、経済政策や制度の意義を基礎的な専門知識を用いて説明できる。
SS-B課題解決の意欲と態度地域社会で生じる諸課題を発見し、その課題の解決に向けて、多様な観点から考察し、その考え方を表現できる。
SS-C共通汎用能力4・論理的思考力情報を多面的・客観的にとらえ、筋道を立てて根拠を示しながら説明できる。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
SS
1・市場の失敗・政府の失敗がなぜ起こるのか、その理由とこれへの対処法ならびにその効果を説明できること。SS-A
2・効率と公平、貢献原則と平等原則、自由と平等などのトレードオフ関係について認識を深め、経済社会の事象を公・共・私の3つの視点から評価できること。SS-C
3・この3視点により、市場の役割や経済政策・制度の意義を公共経済学の基礎的な枠組みで学び、説明できること。SS-B
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
180%テスト・課題・講義中の質問で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
210%テスト・課題で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
310%テスト・課題で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
合計100% 
<授業の方法>
・教員がTeams 等により毎回同時双方向で学生にライブ講義を配信する。適宜学生の思考の時間、質問等の時間を設ける。
・感染状況などに応じ、教室において対面で行う授業も併用する。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
・上期のミクロ経済学を履修していること。
<テキスト>
(未登録)
<参考書>
  1. スティグリッツ (著) 藪下史郎 (翻訳), 『スティグリッツ「公共経済学」上』 , 東洋経済新報社, ISBN:978-4492313312
  2. 常木淳, 『公共経済学』, 新世社, ISBN:978-4883840373
  3. 丸山, 俊一/NHK「欲望の資本主義」制作班(著), 格差拡大 -社会の深部に亀裂が走る時-(欲望の資本主義 5), 東洋経済新報社, ISBN:978-4771021532
  4. 八田達夫, 『ミクロ経済学1・2』, 東洋経済新報社, ISBN:9784492371305
  5. Hindriks J., G.& D. Myles, Intermediate Public Economics, The MIT Press, ISBN:978-0262083447
<授業計画の概要>
1タイトル公共私の3つの視点で経済社会を読む
事前学習
事後学習
事後学習 公共私の3つの視点の意義の確認
授業内容・ 授業の最初に、 この授業全体の到達目標、授業の進め方、課題提出の仕方、成績評価の仕方に関するガイダンスを行います。
・ 次に、公共経済学の到達目標について、次に掲げる項目を中心に講義を行います。
1)「共」とは?  例 農村社会における共助 コミュニティの力 2)市場の失敗:部分最適が全体最適を導かない 3)政策介入の理由 4)政府の失敗 5)政策介入コスト 6)効率と公平とのトレードオフ:社会的選択  
2タイトル独占とその要因
事前学習
事後学習
事前学習 ミクロ経済学の企業理論、特に費用関数の復習
事後学習 独占の経済学的意義
授業内容・市場の失敗の代表的論点の一つである独占の概説と売手独占企業のモデルを講義します。
1)独占の発生要因 2)独占企業の行動 3)独占の死荷重 4)独占価格とマークアップ率 
・独占の導入 なにが参入障壁となるか。
・売手独占企業は、右下がりの需要曲線に直面 すべての違いはこの点に帰着
参考 消費者理論 限界代替率の逓減→右下がりの滑らかな需要曲線
   生産者理論 限界生産力の逓減→右上がりの供給曲線
3タイトル供給独占の度合いの計測
事前学習
事後学習
事前学習 ミクロ経済学の価格弾力性の復習
事後学習 独占の度合いを測る指標 
授業内容・引き続き供給独占の論点について下記項目を中心に講義します。
1)独占の度合いを測る指標 ラーナーの独占度とマークアップ率
2)独占の応用 量販店と八百屋 
4タイトル独占に対する規制
事前学習
事後学習
事前学習 独占の原因 
事後学習 情報の非対称性と政策展開 
授業内容・前段で、独占に対する伝統的な規制政策を講義します。
・次いで、伝統的な規制政策は情報の非対称性の下で破綻することから、新たな規制政策について講義します。1)自然独占と規制 2)公益企業の料金規制と政策展開例:独占企業の費用に関する隠れた情報の導出政策
5タイトル独占の応用例
事前学習
事後学習
事前学習 独占の規制 
事後学習 現実の経済現象の、独占理論による解釈 
授業内容・独占に対する規制を復習します。
・独占の応用例として、差別価格や二部料金などの価格設定の根拠を講義します。 
・独占の理論の総合復習と計算問題による理解度の確認
6タイトルゲーム理論入門
事前学習
事後学習
事前学習 
事後学習 戦略型ゲームと展開型ゲームの復習
授業内容・寡占(複占)の論点をより深く理解するためにゲーム理論を講義します。
1)ゲーム理論の構造 2)囚人のジレンマ:部分最適(個人の最適化行動)が全体最適を導かない(全員の不利益) 3)協調のメカニズム 4)スーパーの参入分析:展開型ゲーム 5)ルールか裁量か:取引費用と制度
7タイトル複占の経済分析1
事前学習
事後学習
事前学習 戦略型ゲームと展開型ゲームの復習、独占の余剰分析
事後学習 寡占とゲーム理論
授業内容・複占のパターンと、クールノー競争のケースの余剰分析による評価を講義します。
1)寡占とゲーム理論 2)クールノー競争 3)余剰分析による寡占、完全競争、独占の位置づけ
8タイトル複占の経済分析2
事前学習
事後学習
事前学習 寡占とゲーム理論
事後学習 複占の3パターンの復習
授業内容・複占のパターンの続きで、ベルトラン競争。シュタッケルベルク競争のケースを講義します。
9タイトル外部性の経済分析1 定義と私的部門による対策
事前学習
事後学習
事前学習 完全競争の条件
事後学習 外部性の意義
授業内容市場の失敗の論点の一つである外部性について、その定義と私的部門による対策を講義します。
1)外部効果と市場メカニズム 2)私的限界費用と社会的限界費用 3)外部効果の抑制 (1)合併 (2)市場のダイナミズム:コースの定理
10タイトル外部性の経済分析2 ピグー税・ピグー補助金による規制政策
事前学習
事後学習
事前学習 外部性の意義と原因 企業の費用関数と供給曲線
事後学習 ピグー税・ピグー補助金の短期と長期の効果
授業内容・外部性のもたらす弊害を抑止する規制政策として、ピグー税・ピグー補助金について講義します。
11タイトル外部性の経済分析3 ピグー税・ピグー補助金の組み合わせ(2PI)と市場創設
事前学習
事後学習
事前学習 ピグー税・ピグー補助金の短期と長期の効果
事後学習 外部性への規制政策の余剰分析による評価
授業内容対策を講義します。
1)市場創設による外部性の解消 2)情報の非対称性の緩和を目指す制度設計 
12タイトル公共財
事前学習
事後学習
事前学習 完全競争の条件
事後学習 公共財の定義と特質
授業内容・市場の失敗の論点の一つである公共財の理論と供給のための政策について講義します。
1)純粋公共財:等量消費と排除不可能性 2)価値財 3)混雑した公共財とその対策 4)公共財の評価:隠れた情報とフリーライダー 5)公共財の最適供給:(1)リンダール均衡(2)サミュエルソン基準 
13タイトル食料政策
事前学習
事後学習
事前学習 公共私の視点 情報の非対称性
事後学習 食の安全を個人でどのように確保するか
授業内容・日本の食料の供給に関する事情について学び、食の安全の実態と展開されている政策について講義します。
14タイトル医療政策
事前学習
事後学習
事前学習 公共私の視点 情報の非対称性
事後学習 医療提供体制の確保のために個人できることは何か
授業内容・日本の医療提供体制に関する事情について学び、国民皆保険制度の動揺の実態と展開されている政策について講義します。
15タイトル総括評価
事前学習
事後学習
事前学習 講義内容全般
事後学習 公共私の視点
授業内容・講義内容全般を振り返り、総括評価のための試験を実施します。
<実務経験のある教員による授業科目の概要>
保険事業の運営に携わり、保険理論を基礎としたリスク分散事業の展開に当たって、理論の適用と、その限界を踏まえた実現可能な運用ルールの策定に関与してきた実務経験がある。講義では、経済学や保険学の理論を解説するなかで、理論の有効領域と限界、理論と実践の橋渡しとなる分析視点を学生に提供する。
<備考>
(未登録)