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授業科目名 ミクロ経済学
時間割番号 LSS212
担当教員名 渡邉 靖仁
開講学期・曜日・時限 前期・金・II 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的>
・授業の目的
この講義では、経済学のもっとも基礎となる価格理論を学びます。まず、経済主体は誘因に反応するという経済学的な考え方を修得します。そのうえで、消費者行動から需要曲線を導き、生産者行動から供給曲線を導きます。そして、両者を合わせて展開される市場によって、希少な資源が効率的に配分されるメカニズムを理解できるようにします。さらにその機能が発揮されるための条件を示し、市場が失敗する場合の対応について概説します。
価格理論は、公共経済学・国際経済学・産業組織論・都市経済学・地域経済学・労働経済学・金融論・行動経済学などの広範な専門分野を学ぶ上での基礎となるものです。本講義によって、その基本的な知識と理論を修得することができます。当学科では、このうち公共経済学のみを講義科目として設置しています。より広く学びたい方は教員に相談してください。
・関連する授業
2年生後期に配当されている公共経済学は、本講義の知識を前提として、より深く現実の経済現象を解明する理論を案内します。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
生命環境学部>地域社会システム学科向け
記号コンピテンシー(能力・資質)説明 
SS-A専門経済学の基礎と発展経済活動の仕組みや市場の役割を理解し、経済政策や制度の意義を基礎的な専門知識を用いて説明できる。
SS-B課題解決の意欲と態度地域社会で生じる諸課題を発見し、その課題の解決に向けて、多様な観点から考察し、その考え方を表現できる。
SS-C共通汎用能力4・論理的思考力情報を多面的・客観的にとらえ、筋道を立てて根拠を示しながら説明できる。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
SS
1・ミクロ経済学の基礎的な用語と概念並びにモデルで分析する考え方を理解し、効率的な資源配分を実現する価格メカニズムの前提条件と機能およびその限界を説明できること。SS-A
2・消費者・生産者などの経済主体が(1)何を「誘因」として行動し(2)それがどのような「相互作用」を及ぼし(3)どのような「帰結」をもたらすかを考える3つの視点を説明できること。SS-C
3・講義で取り上げる現実の経済問題について、上記の3視点による経済学的な考察ができること。SS-B
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
180%テスト・課題・講義中の質問で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
210%テスト・課題で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
310%テスト・課題で該当する項目を正しく説明できたか否かを評価する
合計100% 
<授業の方法>
・教員がTeams 等により毎回同時双方向で学生にライブ講義を配信する。適宜学生の思考の時間、質問等の時間を設ける。
・感染状況などに応じ、教室において対面で行う授業も併用する。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
・講義では比較的詳しい資料を配布する予定です。教科書として指定している神取さんの著書は、後期の公共経済学の履修も希望するかどうかを待ってから、購入を検討してください。
・どの専門分野にも該当しますが、経済学にも固有の専門用語があります。ただしその用語は、長期・短期、上級・下級、弾力性など、日常用語と重なるものが多数あります。こうした用語が登場する際、皆さんは、日常用語の意味に引きずられず、経済学の専門用語としての定義を理解するように心がけてください。もちろん講義ではその都度注意喚起します。人は言葉で考えます。専門分野は専門用語によって学びを深めていくこととなります。この点をあらためて認識しておいてください。
・偉大な先人たちにより精緻に体系化されてきたミクロ経済学は、数学と同様、積み上げて初めて理解できる科目です。例えば第4回<消費の理論(1)最適消費計画の導出>の講義内容の理解が不十分な場合、第8回<消費の理論(5)貯蓄と労働供給への応用>も、第13回<市場取引と資源配分:市場均衡とその評価基準>も理解できません。シラバス上の事前学習は、前回の講義内容の修得・再確認と捉えてください。
<テキスト>
  1. 神取 道宏, ミクロ経済学の力, 日本評論社, ISBN:978-4535557567
<参考書>
  1. スティグリッツ, 『ミクロ経済学』, 東洋経済新報社, ISBN:978-4492313640
  2. 八田達夫, 『ミクロ経済学1・2』 , 東洋経済新報社, ISBN:978-4492812983
  3. 奥野正寛, 『ミクロ経済学』, 東京大学出版会, ISBN:978-4130421270
  4. 井掘利宏, 『入門ミクロ経済学』, 新世社;, ISBN:978-4883840786
  5. Hal R. Varian, “Intermediate Microeconomics: Modern Approach”, W. W. Norton & Company, ISBN:978-0393935332
<授業計画の概要>
1タイトルミクロ経済学とはどのような学問か-誘因と相互作用による行動分析
事前学習
事後学習
講義後、用語の復習をしてください。
授業内容・ 授業の最初に、 この授業全体の到達目標、授業の進め方、課題提出の仕方、成績評価の仕方に関するガイダンスを行います。
・ 次に、ミクロ経済学固有のアプローチの概要について、次に掲げる項目を中心に講義を行います。
1)経済問題と資源の希少性 2)資源配分と所得分配 3)事実解明的分析と規範的分析 4)市場経済とモデル分析 5)制約付き最大化問題 6)最適化と均衡 
2タイトル需要と供給の理論-直感的理解のために
事前学習
事後学習
事前学習 前回提示した専門用語の復習。
事後学習 豊作貧乏を経済学の用語を用いて説明
授業内容・経済学の基礎的な事項を再確認するため、次の5項目について講義をし、経済学的な考え方に親しむ。
1)民主主義社会における自由な取引 2)需要曲線と供給曲線 3)市場価格の形成と取引量の決定 4)なぜ均衡するか  5)豊作貧乏
3タイトル弾力性の概念による需要と供給の分析の深化
事前学習
事後学習
豊作貧乏の復習。
弾力性による経済の特質の解明
授業内容・豊作貧乏や石油危機を経済学的な観点から理解するために、需要の価格弾力性・供給の価格弾力性について解説し、需要供給分析の理解を深める。
4タイトル消費の理論(1) 最適消費計画の導出
事前学習
事後学習
無差別曲線の復習
消費者の行動誘因とその意義をミクロ経済学の用語で把握
授業内容消費者選択理論すなわち消費者が効用を最大化するというモデルの下で最適消費計画が導出されることを解説。
1)無差別曲線と効用 2)選好のパターンと無差別曲線 3)予算制約と消費者行動 4)主体的均衡点(最適消費計画)
5タイトル消費の理論(2) 最適消費計画の理論の有効性と限界
事前学習
事後学習
最適消費計画の導出の復習
無差別曲線の描写可能領域と不可能領域の峻別
授業内容最適消費計画の理論を用いた経済政策の有効性の解説とその適用領域の可否から来る限界を解説。
1)最適消費計画の応用 医療と食料:補助金か直接支払か 2)消費における絶対的必需性と高度な選択性 医療と食料の二つの顔 3)消費理論の適用可能範囲 αゾーンとβゾーン
6タイトル消費の理論(3)消費者の意思決定と需要曲線
事前学習
事後学習
無差別曲線が描写できる領域とできない領域の峻別
財の経済学的な分類と需要曲線の導き方の復習
授業内容消費者の意思決定により最適消費計画が価格変化とともにどのように消費量が変わるかを理解して、需要曲線が導かれることを解説。
1)所得効果と代替効果 2)財の厳密な分類:補完財と代替財・上級財と下級財 3)ギッフェン財 4)需要曲線の導出 
7タイトル消費の理論(4)消費者の合理的選択と財の性質・需要曲線の形状
事前学習
事後学習
財の経済学的な分類と需要曲線の導き方の復習
需要曲線の形状と財の特質の復習
授業内容需要法則・供給法則の原則と例外:右下がりの需要曲線と右上がりの需要曲線について解説。
8タイトル消費の理論(5)貯蓄と労働供給への応用
事前学習
事後学習
需要曲線の形状と財の特質の復習
消費理論の総合復習
授業内容消費者選択理論を応用し、家計がその水準まで貯蓄するか、家計による労働供給水準はどうかを理論的に導く。
9タイトル生産の理論(1)生産関数と等利潤線による利潤最大化
事前学習
事後学習
生産者行動理論の復習
授業内容企業行動のモデルを示し、生産関数と等利潤線によって導かれる利潤最大化の生産量がどの水準になるかを解説。
1)生産関数 2)限界生産力の逓減 3)等利潤線
10タイトル生産の理論(2) 費用関数を用いた利潤最大化の条件の導出
事前学習
事後学習
利潤最大化問題の解法復習
費用最小化=利潤最大化の復習
授業内容生産関数から費用関数を導き、利潤最大化=費用最小化を解説する。
1)総費用曲線 2)平均費用と限界費用 3)価格=限界費用
11タイトル生産の理論(3) 費用最小化と供給曲線
事前学習
事後学習
費用最小化=利潤最大化の復習
供給曲線の導出の復習
授業内容限界費用曲線が供給曲線となること、固定費用が埋没しているか否かで供給曲線が異なることを解説
12タイトル生産の理論(4) 生産の理論の復習と応用 
事前学習
事後学習
各種費用曲線の導出の復習
生産の理論全般の復習
授業内容生産の理論全般を振り返り、短期と長期の費用曲線について解説し、規模の経済の概念を経済学的に定義する。
13タイトル市場取引と資源配分:市場均衡とその評価基準
事前学習
事後学習
需要曲線・供給曲線の導出の復習
余剰分析の復習
授業内容消費者行動理論から導かれた需要曲線と、生産者行動理論から導かれた供給曲線の、市場全体の曲線を導出し、両者を用いた市場均衡がいかに効率的であるかを余剰分析によって示す。
14タイトル市場の失敗総論
事前学習
事後学習
余剰分析の復習
完全競争の条件
授業内容完全競争市場の前提となる条件を列挙し、これらが満たされない場合の経済現象について概要を解説し、特に情報の非対称性について詳しく述べる。
1)独占 2)情報の非対称性:部分最適(個人の最適化行動)が全体最適を導かない(市場の消滅) 3)異質な財  4)公共財 5)外部性 6)所得分配
15タイトル価格メカニズムの機能とその限界:総まとめと試験による理解度確認
事前学習
事後学習
今までの講義内容全般の復習
完全競争市場の機能と限界
授業内容今までの講義内容を総合的におさらいし、試験によって修得状況を測る。
<実務経験のある教員による授業科目の概要>
保険事業の運営に携わり、保険理論を基礎としたリスク分散事業の展開に当たって、理論の適用と、その限界を踏まえた実現可能な運用ルールの策定に関与してきた実務経験がある。講義では、経済学や保険学の理論を解説するなかで、理論の有効領域と限界、理論と実践の橋渡しとなる分析視点を学生に提供する。
<備考>
(未登録)