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授業科目名 関数と数列
時間割番号 EEM221
担当教員名 吉田 夏海
開講学期・曜日・時限 前期・木・II 単位数 2
<対象学生>
「微分積分学I・II」の理解が確り出来ている点が望まれる。解析学特有の抽象性が有るので、定義に忠実に論証して行く姿勢が大切である。
<授業の目的>
 解析学で最も基礎的な極限の概念に関連する事項の概念の習得を図る。いわゆる ε-δ論法で代表される概念の習得を今一度確認しておいてもらい、それ関連の概念・それの発展的事項の概念の習得をめざす。微分積分学で既出の実例を踏まえながら、微分積分学でまなんだ数列の収束の概念(いわゆるε-δ論法)は身についているものと扱うが、それを基にして、無限級数の収束性を理解することで級数論の基礎を学習する。その後、関数の極限値や連続性、そして関数項級数へと議論を発展させる。また、微分積分学で既に馴染み深い諸定理を体系的に整理し、基礎解析学で重要な諸定理の証明を論理的に理解する。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
教育学部向け
記号コンピテンシー(能力・資質) 
A専門教科等の専門教養取得見込みの教員免許に対応する教科の目標や内容に関する知識を習得している。
B持続的変態力教師として学び続ける意志と課題探求力を身につけている。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
教育
1 数列や無限級数の収束性を「直感的」にではなく「論理的」に理解した上で、実数列や無限級数の極限計算ができる。また、実数列や無限級数に関わる様々な諸定理の証明ができる。A
2 関数の極限値や連続性を論理的に理解した上で、その極限値を計算したり、連続性の有無を判定できる。また、特に関数の連続性, 一様収束性に関わる諸定理の証明ができる。B
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
150%離散的対象の理解。
250%連続的対象の理解。
合計100% 
<授業の方法>
面接授業とオンデマンド型を混用する。
対面での講義を予定しているがコロナ禍の状況によってはオンデマンド型の講義となり得る。対面の場合は、出席者は、必ずマスクを着用の上、着席間の距離は1m以上離して貰う。また、換気のため窓を開放して行うことが有り得るので、寒さ対策を行う様に。講義前後に手洗い・手指消毒を必ず行うこと。オンデマンド型の講義の場合は、詳細に解説した講義資料や演習課題、関連資料などの必要事項をMoodleにアップロードするので、レポート課題の提出を行うこと。課題の提出状況や出来に応じて成績の評価を行う。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
微分積分学I、微分積分学IIまた集合と写像 の知識は十分修得されているものとして進める。これらの履修は、この科目の履修条件と考えて貰いたい。適宜、その分野の復習や予習を自分でしておくこと。いわゆるε-δ論法も修得されているものとするので、適宜復習しておくこと。
微分積分学I、微分積分学IIの教科書は持参すること。
<テキスト>
  1. 特に無し。
<参考書>
  1. 適宜紹介する。
<授業計画の概要>
1タイトル数の復習と剰余計算
事前学習
事後学習
過去に学んだ微分積分学の復習を前以て行い、更に本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容本講義の目的の一つは有理数から実数を構成することである。その準備としてやや抽象的な「関係」と言う数学概念が登場する。数の大小関係や三角形の合同関係等、様々な関係がある。反射律、対称律、推移律を全て満たす二項関係を同値関係と言い重要な概念である。同値関係がある集合は同値類別が出来、同値関係による商集合が定義出来る。実数の構成法の一つにおいて避けて通れぬ議論である。整数の剰余類等の例も挙げる。一見すると当たり前のことをくどくど言っている、と思った矢先、急に雲を掴むような話になって行く様に思われる受講生の諸君もいることだろう。しかし数学で大切なものは定義である。抽象的な概念ほど定義通りに議論を進める必要がある。
2タイトルε-N論法
事前学習
事後学習
過去に学んだ微分積分学の復習を前以て行い、更に本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは数列の収束と発散について振り返る。数列の収束性を厳密に定義するには通常ε-N論法が用いられる。主にこのε-N論法に関する説明を、例題を交えつつ解説した。高校数学の受験テクニックでお馴染みの挟み撃ちの原理も実はε-N論法で正確に示せる事実である。同様に数列の発散もε-N式に定義出来る。同じく高校数学の受験テクニックとしてしばしば追い出しの原理と呼ばれるものがあったが、これも簡単に証明出来る事実である。
3タイトルCauchy列
事前学習
事後学習
過去に学んだ微分積分学の復習を前以て行い、更に本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは数列の収束と発散の続きとしてCauchy列(基本列とも)について考える。Cauchy列の理解は微分積分学を始めとする解析学の理解に無くてはならないものである。特に収束列とCauchy列の違いは明確に理解しておく必要がある。大きな違いはCauchy列は数列の極限に関して言及していない所である。基本事項として、収束列ならばCauchy列であることをここではまず示す。そして種々の具体例(有名な級数)を挙げ、Cauchy列と同値な言い換えについても考える。大切なことは、有理数上の数列の極限は必ずしも有理数なる訳ではないという点である。先に収束列ならばCauchy列と言ったがその逆はどうか。これは有理数の世界では成り立たない。即ち有理数は完備でない。
4タイトル実数の構成法(?の完備化)
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容有理数の完備化を行う。有理数全体の集合?には有理Cauchy列が定義出来る。C_?を有理Cauchy列全体の集合とし、C_?上の二項関係~を、同じ収束先を持つ関係で定義すれば、~は同値関係となる。従ってC_?の~による商集合C_?/~が定義出来る。C_?の~における同値類α∈C_?/~の代表元を{a_n}(={a_n}_n∈?)とすれば(即ちα=[{a_n}])、αは有理Cauchy列{a_n}と同じ「極限」を持つ有理Cauchy列を全て集めて来た集合となる。これは有理Cauchy列{a_n}の「極限」値に1対1に対応している。この意味において、αを「有理Cauchy列{a_n}の極限値」と同一視するのがアイディアである。商集合C_?/~は有理Cauchy列の~による同値類全体の集合族であるが、このアイディアの下、「有理Cauchy列の極限値全体の(数の)集合」と同一視出来る。これによって実数全体の集合はC_?/~で定義出来、C_?/~=?と書く。時間をかけ、可能な限り丁寧に解説してあるが、今回は分量が多く、抽象的な議論もやや多いため、初学者にとっては難しいであろうが、ここは分かる範囲で学習すれば良い。
5タイトル距離空間と全順序
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容距離空間の定義、特に三角不等式に注目すること。距離空間上のCauchy列が収束列でもある時、距離空間は完備であると言う。有理数体Qは通常の絶対値を距離とする距離空間であるが完備ではないことは良いであろう。更に全順序集合についても定義しておく。
6タイトル有理数の"隙間"
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここから内容が変わる。有理数体?から実数体?を構成する別の方法として、Dedekind切断によるものが有る。要は実数を有理数の隙間と捉える訳である。有理数体?には大小関係が有った。?の空でない部分集合である下組Aと上組Bで分ける。即ち?=A∪Bとし、このAとBとの境目を「数」とするのがアイディアである。この境目は有理数点か有理数でない「隙間」のどちらかである。有理数点でない「隙間」を無理数点だとする訳である。即ち、仮に、有理数点も隙間だとすると、下組Aと上組Bによる切断は有理数である隙間とそうでない隙間の全てを表すことになる。?の切断によって?を定義する。このことから実数?の切断を考えれば下組には最大値が有るか、上組には最小値が有るかの何れかが必ず成り立つ。これをDedekindの切断公理と呼ぶ。?の大小については下組同士の包含関係で定義する。これにより?は全順序集合となる。
7タイトル切断とWeierstrasの公理
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容Dedekind切断によって実数体?を構成した。少し復習から入る。ここでは更に、加減乗除の定義を更に説明する。今回の目的は実数?を特徴付けるものとしてのWeierstras(Weierstrass)の公理、即ち上限性質の証明にある。そのために再度、上限・下限の復習を行う。上限・下限とは言わば最大数(最大値・最大限と言っても良い)・最小数(最小値・最小限と言っても良い)の代用品である。大雑把には最大値や最小値が無くとも上限や下限は有る。当然それらが一致する場合も有る。他方、上限性質と同等な下限性質(これもWeierstras(Weierstrass)の公理)についても簡単に触れる。解説込みの例題も与えた。受講者諸君はまず定義を正確に覚え、記号の使い方に習熟する様に。更に、実数の連続性の公理やArchimedesの公理(同等な言い換えは数パターン有り)に関しても説明する。しかしながら、諸定理の主張は理解すべきだが、証明はやや技巧的な箇所が有るので難しいと感じた箇所は取り敢えず、ああそんなものか、で当面は問題無い。
8タイトル区間縮小法とBolzano-Weierstrasの公理
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは数列の極限を用いて、実数の連続性の公理の言い換えを行う。実際に、上に有界な単調増加数列は収束する、と換言される。これを用いれば無限小数は実数を表すことが直ちに導かれる。このことは実数の特徴付けに他ならない。以前に、無限小数は必ずしも有理数とはならぬことは幾らか典型例で示した通りである。他方、Archimedesの公理(の表現の1つ)も示し、幾らか応用例も示す。最後に区間縮小法やBolzano-Weierstras(Weierstrass)の定理を証明する。諸定理の主張は理解すべきだが、証明はやや技巧的な箇所が有る。
9タイトル連続関数の概要
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容今回以降は関数を扱う。関数の連続性についての話題に移る。ここでは関数の連続性や諸性質について復習する。その中で、双曲線関数と呼ばれる関数も序でに復習する。連続関数で特に大事なのが、中間値の定理や最大値・最小値の定理である。これらも具体例を通して見て行く。次回以降はこれらの話を厳密化する。
10タイトル関数の極限
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは関数の極限を厳密に定義する。いわゆるε-δ論法により「lim」や「x→a」等と言った曖昧な表現無しに定義出来る。極限に関しても右から近付くか、左から近付くかが有ったが、これもε-δ論法により正確に定義出来る。更には関数の連続性もε-δ式に定義出来る。関数の連続性を、単位ステップ関数、Heaviside関数、符号関数等で具体的に考える。
11タイトル中間値の定理と最大値・最小値の定理
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは関数の極限や連続性をε-δ論法により厳密に定義したが、更に、中間値の定理や最大値・最小値の定理を厳密に証明する。その際に、二分法やBolzano-Weierstrasの定理が役立つ。最後に二分法の話題に触れる。
12タイトル?の位相と連続性
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容連続性に関しては今回が山場である。関数の極限や連続性をε-δ論法により厳密に定義し、中間値の定理や最大値・最小値の定理を厳密に証明したが、ここでは更に?の位相(遠いか近いかを厳密に)と関数の連続性を考える。まず、開集合や閉集合を定義する。開集合を定義するにはまずはε-開近傍を定義することになる。閉集合は開集合の?における補集合として定義する。空集合{}や?は?の開集合であり、尚且つ閉集合でもある点には注意する。これは定義から示されることである(尚、空真の考え方を用いるが、良く分からなければひとまず読み飛ばして事実のみ記憶しておけば良い)。今までの開区間は開集合、閉区間は閉集合であることも示せる。更に、集積点についても定義する。集積点を用いれば閉集合を特徴付けすることが出来る。更に、開集合(閉集合)と逆像を用いて関数の連続性を言い換えることが出来る。最後にコンパクト集合を定義する。?で考えた際はいわゆる有界閉集合と同値だが、これの証明に入る。まず、?の部分集合に対する開被覆を定義し、もし、任意の開被覆に対し有限部分開被覆が取れる時に、その部分集合はコンパクトであると言う。
13タイトル続・?の位相と連続性
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容?におけるコンパクト集合はいわゆる有界閉集合と同値であることの証明をまず完成させる。前回はコンパクト集合は有界閉集合であることを示した。従って今回は、Heine-Borelの被覆定理、即ち、有界閉集合はコンパクト集合であることを二分法によって証明する。コンパクト性にる最大値・最小値の定理も紹介する。
14タイトル一様連続性
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容今回は連続関数についての話題としては最後である。ここでは一様連続性について考えて行く。通常の連続性よりも一様連続性の方が強い概念である点には注意が要る。具体例を通して見て行く。更に、コンパクト集合上の連続関数はコンパクト集合上一様連続であると言うHeineの定理も証明する。最後に一様連続性よりも条件の更に強いLipschitz連続性について考える。
15タイトル面積とRiemann積分
事前学習
事後学習
本講義内容の復習を確り行うこと。
授業内容ここでは積分の概念について考える。積分とは何だったか。定積分は図形的には面積を表していた。基本となるのは長方形の面積だった。即ち長方形の面積は(横)×(縦)であった。曲線で囲まれた図形の面積Sに対して、微小区間(例えばn等分)して各分点に対する関数値(縦)を持つ細長い長方形(短冊と呼ぶことにする)の合計の面積で近似出来る。分割の幅(メッシュ)を限りなく細かくすればSに収束させることが出来る。これが高校数学における区分求積法である。然しより一般には区間の分割でありさえすればn等分ではなくとも良い。ここからRiemann和の話が始まる。
<備考>
(未登録)