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授業科目名 微分積分学I
時間割番号 EEM121
担当教員名 吉田 夏海
開講学期・曜日・時限 前期・火・I 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的>
目的:高校で学んだ微分積分の適用範囲を一般の関数に対して拡張する.
また Taylor の定理等のより進んだ理論も学ぶ.
特に重要な関数 (整関数, 有理関数, 無理関数, 三角関数, 逆三角関数, 指数関数, 対数関数) とそれらの合成関数を中心に扱う.
あわせて, 大学での数学の学び方を身につけられるようにする.
概要:数の概念, 1変数の関数の極限, 微分積分の理論を理解し, 上記の種々の関数について基本的な方法を適用できるようになること.
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
教育学部向け
記号コンピテンシー(能力・資質) 
A専門教科等の専門教養取得見込みの教員免許に対応する教科の目標や内容に関する知識を習得している。
B持続的変態力教師として学び続ける意志と課題探求力を身につけている。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
教育
11.基礎的な数学の記号を理解し、用いることが出来る。A
22.実数、 関数の概念を理解し、その意味を述べることが出来る。B
33.微分、積分の概念を理解し,その意味を述べることが出来る。B
44.微分、積分の具体的な計算が出来る。B
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
125%高校数学の復習。
225%逆三角関数や双曲線関数等の関数の性質。
325%微分法。
425%積分法。
合計100% 
<授業の方法>
対面での講義を予定しているがコロナ禍の状況によってはオンデマンド型の講義となり得る。対面の場合は、出席者は、必ずマスクを着用の上、着席間の距離は1m以上離して貰う。また、換気のため窓を開放して行うことが有り得るので、寒さ対策を行う様に。講義前後に手洗い・手指消毒を必ず行うこと。オンデマンド型の講義の場合は、詳細に解説した講義資料や演習課題、関連資料などの必要事項をMoodleにアップロードするので、レポート課題の提出を行うこと。課題の提出状況や出来に応じて成績の評価を行う。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
受動的な学習態度のみでは十分な学習効果は得られない。従って、自発的な学習態度で臨むこと。内容の習熟には復習や反復練習が欠かせない。当然、微分法、積分法は単なる計算技術ではないし、単なる暗記物でもないが、一度、数学的な原理や証明・導出を学んだ後は、覚えるべき公式は覚えて反復練習を行う様心掛ける様に。
<テキスト>
  1. 戸田暢茂著, 基礎微分積分, 学術図書出版社, ISBN:4873612047,
    (1996年出版)
<参考書>
  1. 稲葉 三男, 微積分の根底をさぐる, 現代数学社, ISBN:4768703356
  2. 小林龍一, 広瀬健, 佐藤 總夫, 解析序説, 筑摩書房, ISBN:4480092595
  3. 笠原 晧司, 微分積分学 (サイエンスライブラリ―数学), サイエンス社, ISBN:4781901085
  4. S.ラング, 解析入門, 岩波書店, ISBN:4000051512
  5. 小島 政利, 後藤 和雄, 初歩からの微分積分, 共立出版, ISBN:4320017994
<授業計画の概要>
1タイトル数と四則演算
事前学習
事後学習
高校数学の確認をしておくこと。また復習を確り行う様に。
授業内容受講者諸君は高校を卒業するまでに、自然数、整数、有理数、無理数、実数、複素数について学んだことと思う。これらの数の集合を、四則演算(加法(足し算+)、減法(引き算-)、乗法(掛け算×)、除法(割り算÷))の立場から見直す。すると、数の集合と演算とがどの様に関係するかが徐々に見えて来る。自然数の集合をN、整数の集合をZ、有理数の集合をQ、実数の集合をR、複素数の集合をCで表すことはまず覚えてもらいたい。その上でそれらの集合の性質をじっくり見直してもらいたい。このことは諸君が将来、仮に数学教員になる場合に必ず役立つであろう。
2タイトル数列と挟み撃ちの原理
事前学習
事後学習
復習を確り行う様に。
授業内容数と演算に関する話の次は、数を並べた列である数列の話に移る。数列には、初項と末項が定まった有限数列と、末項の定まらない無限数列がある。特に後者である無限数列に焦点を当てる。数列の添え字(nのこと)が限りなく大きくなる時に、その数列がどの様に振る舞うかが本講義のメインテーマの一つである。収束・発散の話を取り上げている。数列が収束することは厳密にはε-N論法によって定義される。初学者にとっては、論理記号がいくつか現れ、抽象的であり、困難に思えるかもしれない。然し、最初は理解しきれないかもしれないが一応眺めて貰いたい。この様な抽象性が大学数学の特徴の一つである。次いで挟み撃ちの原理に関して考える。この原理は高校数学の、特に受験数学のテクニックの一つとしてひょっとすれば使ったことのある諸君もいるかも知れない。重要な原理であるのでもう一度ここで、いくつかの例題を通じて考えてみる。序でに追い出しの原理についても触れる。他にも、三角不等式(これは暗記する価値がある)、Gauss記号のことも触れる。各自、反復練習する様に。
3タイトル数列の漸化式と有界性
事前学習
事後学習
復習を確り行う様に。
授業内容今回も前回に引き続き数列の話をする。まず高校数学でも現れたであろう漸化式の復習から始める。一般項が求まる場合と、一般項を求めるのが困難ないし不可能な場合でも極限値が求まる場合がある。次に数列の有界性について考える。重要な定理として「有界かつ単調な数列は収束する」というものがある。証明は別としてこれは覚えておくべきである。この定理を用いれば種々の数列の極限の存在が証明出来る。その中の一つが自然対数の底(Napier数とも)である。この定義式も記憶すべきである。但し高校数学での「二項定理」に関する知識については既知であるとしているので、不安のある人は各自で復習することを勧める(取り敢えず二項定理の公式を暗記していれば特に問題ないのだが)。
4タイトル級数
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は数列の無限和である級数(無限級数とも)の話をする。数列同様、級数についても収束・発散の議論は欠かせない。まず、収束の必要条件を与える。即ち級数が収束するなら一般項がゼロに収束する、というものである。これと同値な言い換えとして対偶命題を取れば、数列が発散またはゼロでない数に収束するならば級数は発散する、となる。これは大事である。
5タイトル関数の復習
事前学習
事後学習
復習を確り行う様に。
授業内容今回からは関数について考えてい行く。まず関数について高校数学に関する総復習をここでは行う。関数は様々である。多項式関数 ( 有理整関数 )、有理関数 ( 分数関数 )、三角関数、指数関数、対数関数が有った。更に奇関数、偶関数、周期関数、逆関数の性質をも解説する。特に逆関数の作り方は確実に抑えること。
6タイトル関数の極限
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は関数の極限の話を始める。前回は高校数学での関数に関する総復習であった。ここではまず、関数とは何だったかを再考する。かつては「函数」と表記していたものである。独立変数、従属変数、変域、定義域、値域、等の言葉は自分で説明出来る様にしておくこと。次いで数列の極限同様、関数の極限を定義する。関数の極限に対しても加減乗除が使える。それを基に関数の極限に関して、計算例題を幾らか解説した。後、実数全体の集合?の部分集合として、区間と言うものがあり、しばしば関数の定義域として用いられる。区間についても有限区間、無限区間が有り区別が必要である。最後に関数の性質として、増加、減少について定義する。
7タイトル関数の種々の極限
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回も関数の極限の話を続ける。三角関数や指数関数・対数関数の極限公式等を導く。幾らかの極限公式は内容を理解した上で記憶すること。更に無限遠点での極限の定義を与える。
8タイトル連続関数
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は関数が連続であるとはどういうことか、即ち関数の連続性について考えて行く。その中で、双曲線関数と呼ばれる関数を導入する。連続関数で特に大事なのが、中間値の定理や最大値・最小値の定理である。これらも具体例を通して見て行く。
9タイトル種々の逆関数と合成関数
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は種々の逆関数について紹介する。定義域上単調な(つまり1対1対応になる)関数に対しては、その値域を定義域に持つ逆関数が定まり、しかも単調である。連続な関数の逆関数もまた連続でもある。まず三角関数の逆関数である逆三角関数を紹介し、種々の性質を見て行く。更に、双曲線関数の逆関数である逆双曲線関数も紹介する。これらの関数は大学ならではであろう。
10タイトル微係数と導関数
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は微分法に関する話題となる。まず微分係数と導関数の定義から始める。その上で導関数の定義や種々の関数の微分公式を導く。特に、積の微分公式や合成関数の微分公式は必ず記憶すること。積の微分公式は後の部分積分の公式、合成関数の微分公式は後の置換積分の公式に直結している。最後に逆関数の微分法も詳述したのでじっくり復習すること。最後に微分公式をまとめて置いたので、これらは記憶すべきである。その方が後々楽である。色々と例題を解き、使って覚えるのが理想的である。
11タイトル微分法の応用
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は微分法の応用に関する話題となる。まず媒介変数表示の関数の導関数から始める。次に、導関数の持つ幾何学的な意味を考える。微分可能な関数の導関数は実は、元の関数の各点での接線の傾きを表している。序でに法線も考える。更に関数の性質を調べる上では1回のみの微分のみでは不十分な場合も有る。従って何度も微分を行うことを考える。即ち高階導関数を導く訳である。三角関数や指数関数等、代表的な関数についてそれぞれの高階導関数の表現が如何なるかを考え、導いて行く。最後に、高階微分特有のLeibnizの公式を導く。これは二項定理に類似する。実際にLeibnizの公式から二項定理を導くことが出来ることを最後に紹介する。今回も分量がやや多めだが詳細に解説してあるので、例題を確り解く様にすると良い。
12タイトルTaylorの定理とその周辺
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容今回は微分法で特に重要なTaylorの定理やMaclaurinの定理に関して考えて行く。今回が本講義での山場の1つである。まず関数の極大・極小の概念から解説し、関数が極値を持つための必要条件も考える。以前解説した最大値・最小値の定理からスタートし、Rolleの定理を証明する。この定理を用いて、Taylorの定理やMaclaurinの定理を導く。証明はやや複雑だがじっくり考えること。Taylorの定理から平均値の定理は自然に出る。然しこの平均値の定理もTaylorの定理同様非常に重要であり、定理の主張だけでも必ず記憶すべきである。続いては滑らかな関数の級数展開を行う。即ちTaylor級数やMaclaurin級数による展開を考える。最後にEulerの公式を形式的に導出する。
13タイトル関数の増減と不定形の関数の極限
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容関数の増減については、増減を知ることでその関数のグラフの大体の形(概形)を知ることが出来る。関数が微分可能であればその導関数が存在する訳だが導関数が正であれば元の関数は単調増加、負であれば単調減少となる。更に極値に関しても考える。極値には極大値・極小値が有った。即ちある狭い範囲でのみ関数を考えた際に、その狭い範囲で最大であれば極大、その狭い範囲で最小であれば極小であった。ある点を中心に狭い範囲を考え、その点よりも小さい範囲では導関数が正、大きい範囲では負の場合、その点で関数は極大となる。逆に小さい範囲で負、大きい範囲で正であればその点では極小となる。不定形の関数の極限については、不定形の関数の極限値を求める方法を考える。既に平均値の定理は紹介した。これを一般化したCauchyの平均値の定理をまず導く。それにはRolleの定理を援用することになる。このCauchyの平均値の定理からl'Hopitalの定理が得られる。本定理を用いることで不定形の関数の極限を不定形でない関数の式に変換し、その極限値を容易に求めることが出来る。従って、この定理はしばしば大学入試の裏テクとして受験生の間でも今も昔も知ってる人は知っている、と言う状況である。然し、正しい使い方やl'Hopitalの定理の正確な主張を知らずに使うのは実に危険である。この点について特に注意する。幾らかl'Hopitalの定理の使い方として適切でないものも様々な書籍等で見られる。l'Hopitalの定理を正しく使うには、本来は定理の前提条件を全て満たすことを確認し、その上で定理の主張通りに用いなければならない。
14タイトル定積分とRiemann和
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容ここからはいよいよ積分法の話題へ移る。特に定積分(Riemann積分)を定義する。高校数学でも定積分を微小な等間隔の底辺と持つ長方形(短冊)の寄せ集めで定積分を近似しその極限として定積分を定義し、これを区分求積法と言った。ここではそれをより一般のRiemann和によって定積分を定める。ここでは有界閉区間上連続な関数のみを扱う。この時、最大値・最小値の定理からこの関数には必ず定義域上の最大値、最小値がそれぞれ存在する。区分求積法ではこの定義域(有界閉区間)を均等に分割(例えばn等分)して考えたが、Riemann和の場合には必ずしも等間隔で分割される必要は無い。分割さえすれば良いのである。この様に分割された各区間も当然、有界閉区間であるので各区間毎に、その関数は最大値、最小値を持つことが分かる。その上で長方形による面積比較を行うことで、本来求めたい関数に対する面積を上からも(過剰和を用いて)下からも(不足和を用いて)評価出来る。仮に各分割の最大値(これを分割の幅、大きさ)と言うが、分割の幅を0に近づけた際に、過剰和と不足和が共にある値にそれぞれ収束し(Darbouxの定理)、両者の極限値が一意した時、間に挟まれたRiemann和も挟み撃ちの原理によって、その極限値に収束する。この時、その関数は有界閉区間上Riemann積分可能、Riemann可積分、定積分可能、或いは単に可積、と言う。この様に定義したRiemann積分(定積分のこと)には今まで高校数学等で用いて来た様な、線形性等の性質を全て満たす。積分の平均値の定理等も紹介しつつ、最後に微分積分学の基本定理を証明する。
15タイトル不定積分
事前学習
事後学習
教科書で対応する箇所もじっくり読み、復習を確り行う様に。
授業内容前回はRiemann和による定積分に関する話題であったが今回は不定積分について改めて考える。ここでの積分とは微分の逆演算としての積分である。まず原始関数と不定積分の定義をはっきりさせて置く。不定積分にも線形性が有り、置換積分法や部分積分法も紹介する。強調して言うが置換積分法と部分積分法は極めて大切な手法であり必ずものにするべきである。例題を多く設け、不定積分の計算法を詳述する。積分の漸化式、分数関数の積分およびある種の関数の積分は分数関数の積分に帰着されること、最後には無理関数の積分に関しても考える。
<備考>
復習と反復練習は必須。