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授業科目名 生と幸福
分類人文科学
時間割番号 CACK06
担当教員名 橋爪 大輝
開講学期・曜日・時限 前期・月・III 単位数 2
<対象学生>
全学部生
<授業の目的>
この科目は「連携開設科目(主幹大学:山梨県立大学)」です。

「福祉」ということばは、「幸福」を意味する。とはいえ、幸福とはいったいなんだろうか? 福祉を漠然としたイメージではなく、概念としてきちんと理解するためには、幸福を理解することが必要なのかもしれない。
この授業では、この問いに哲学的な角度から迫っていく。幸福は、哲学におけるもっとも古いテーマのひとつである。哲学において幸福がどのように考察されてきたかを歴史的にも見ていくことで、この問いへのさまざまな答えかたを考えさせることが、この授業の目的である。
<本授業科目による獲得・涵養が特に期待されるコンピテンシー>(能力・資質)
全学共通教育科目向け
記号コンピテンシー(能力・資質)説明 
A共通教養多様な知識の獲得単位を取得した教養教育科目の概要と、重要な基礎的事項を説明できる。
B汎用能力1・コミュニケーションスキル読解力情報の正確さや分析の妥当性などについて吟味しながら学術的な文献を読むことができる。
C4・論理的思考力情報を多面的・客観的にとらえ、筋道を立てて根拠を示しながら説明できる。
D5・問題解決力省察力取り組みを評価し、解決方法や計画を改善できる。
<到達目標>  到達目標とは
目標NO説明コンピテンシーとの対応
共通
1幸福について、哲学的に深く考察するとともに、自らの価値観を相対化できる。D
2幸福論をはじめとして、様々な哲学者の思想や、その社会的背景などの知識を得られる。A
3さまざまな哲学的テクストを正確に理解し、解釈できる。B
4理解し省察した内容を、きちんとした言葉と論理で文章として表現できる。C
<成績評価の方法>
目標No割合評価の観点
120%レポートにおいて評価する。
220%各回のコメントシートでその点を見る。
330%レポートにおいて評価する。
430%レポートにおいて評価する。
合計100% 
<授業の方法>
基本的に、担当教員による講義が中心である。
各回の授業後にコメントシートを回収し、そのつぎの回に意見や質問などを取りあげ、回答する。
また、技術的に可能であれば、授業内でリアルタイムのアンケートを行うことで、受講生の意見を反映したい。
※本年度は、ZoomとGoogle Classroomを併用したオンライン授業形式となる。

【授業外の学修】
・授業のまえに、各回の内容に関連する事典項目などを参照し、その回の内容のイメージを形成しておくこと。
・授業後は、配布資料や、授業時にとったメモ・ノートなどをしっかり読み返すこと。授業内で挙げられた参考文献をみずから読み進められるとなお望ましい。

【授業外の学修】
・授業のまえに、各回の内容に関連する事典項目などを参照し、その回の内容のイメージを形成しておくこと。
・授業後は、配布資料や、授業時にとったメモ・ノートなどをしっかり読み返すこと。授業内で挙げられた参考文献をみずから読み進められるとなお望ましい。
<受講に際して・学生へのメッセージ>
質問には、授業内に(可能であれば)設ける質疑の時間に回答します。
また各回のコメントシートにたいして、つぎの回に回答します。
授業内で質問可能なメールアドレスを提示する予定です。
<テキスト>
  1. 教科書は使用しない。担当教員が作成した資料を毎回配布する。
<参考書>
  1. 授業内で適宜紹介する。授業全体に関わるものとしては、偶然にもタイトルと発行年が同じの次の二著。
  2. 長谷川 宏, 幸福とは何か, 中公新書, ISBN:978-4-12-102495-4
  3. 森村 進, 幸福とは何か, ちくまプリマー新書, ISBN:978-4-480-68329-8
<授業計画の概要>
1タイトルイントロダクション
事前学習
事後学習
自分がどのような幸福のイメージをもっているか、じっくり考察すること
授業内容を振りかえり、ノートやプリントを見返すこと。
授業内容全体の導入として、哲学について、幸福について説明する。
2タイトル古代の幸福論1 哲学者がいちばん幸福?
事前学習
事後学習
ソクラテスとアリストテレスについて事典等でかんたんに知っておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容古代ギリシャのソクラテスとアリストテレスの幸福観について学ぶ。
3タイトル古代の幸福論2 幸福とは快楽のこと?
事前学習
事後学習
エピクロスについて事典等でかんたんに知っておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容エピクロスの幸福論について学ぶ。
4タイトル古代の幸福論3 どんな苦境でも幸福になれる?
事前学習
事後学習
ストア派について事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容ストア派の幸福論について学ぶ。
5タイトル中世の幸福論 幸福は神にあり?
事前学習
事後学習
中世のキリスト教の神学者たち、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、ドゥンス・スコトゥスについて調べてみること。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容中世のキリスト教の神学者たち、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、ドゥンス・スコトゥスらの幸福論について学ぶ。
6タイトル中間考察I 古代・中世の幸福論を振りかえる
事前学習
事後学習
第2回から第5回で学んだ内容を独自に復習し、疑問点などを整理すること。
ノートやプリントを見返し、また授業内で予告する次回以降の授業内容の予告をもとに、その内容を予習すること。
授業内容第2回から第5回の授業内容を振りかえり、その幸福論を総括する。
7タイトル近代の幸福論1 最大多数の最大幸福?
事前学習
事後学習
功利主義について事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容功利主義(ベンサム・ミル)の幸福論について学ぶ。
8タイトル近代の幸福論2 義務は幸福にまさるのか?
事前学習
事後学習
カントについて事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容幸福よりも義務を優先すべきとするカントの考えを学ぶ。
9タイトル近代の幸福論3 幸福に豊かさは必要?
事前学習
事後学習
アダム・スミスについて事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容アダム・スミスの幸福観について学び、経済と幸福の関係を考える。
10タイトル中間考察II 近代の幸福論を振りかえる
事前学習
事後学習
第7回から第9回で学んだ内容を独自に復習し、疑問点などを整理すること。
ノートやプリントを見返し、また授業内で予告する次回以降の授業内容の予告をもとに、その内容を予習すること。
授業内容第7回から第9回の授業内容を振りかえり、その幸福論を総括する。
11タイトル現代の幸福論1 幸福論なき時代?
事前学習
事後学習
ショーペンハウアー、ラッセル、ヒルティ、アランについて事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容一種の「ハウツー本」のようなあり方をしている現代の幸福論について学ぶ。
12タイトル現代の幸福論2 政治という幸福?
事前学習
事後学習
アーレントについて事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容政治に幸福を見るアーレントの独特な幸福観を学ぶ。
13タイトル現代の幸福論3 幸福の三つの捉え方?
事前学習
事後学習
現代幸福論について事典等でかんたんに調べておくこと。
ノートやプリントを見返すとともに、授業内で紹介した本について調べてみること。
授業内容現代の幸福の哲学を学ぶ。
14タイトル中間考察III 現代の幸福論を振りかえる
事前学習
事後学習
第11回から第13回で学んだ内容を独自に復習し、疑問点などを整理すること。
ノートやプリントを見返し、また授業内で予告する次回以降の授業内容の予告をもとに、その内容を予習すること。
授業内容第11回から第13回の授業内容を振りかえり、その幸福論を総括する。
15タイトル全体のまとめ
事前学習
事後学習
ここまでの14回の授業内容をノートやプリントなどで振りかえり、疑問点等を整理しておくこと。
授業内容を振りかえり、そして幸福論の哲学書を実際に読んでみること。
授業内容ここまで学んだことを総括し、それを踏まえて、あらためて「幸福とはなにか」を考える。
<備考>
「科目の目的」にも記したように、幸福やしあわせについての哲学や思想を、歴史的に追跡していくことが基本となる。哲学の歴史を「哲学史」と呼ぶが、哲学史的に学ぶことは、一見すると、私たちの現代とは無関係な思想を骨董品的に鑑賞することに思われるかもしれない。しかし、哲学は歴史のなかで積み重ねられてきた学門であり、その蓄積のうえに立って考えてはじめて、私たちはより先に進むことができる。現代の、いまを生きる私たちの問題を考えるためにこそ、哲学史を踏まえるのである。

授業計画は、あくまで予定であり、授業の進度や受講生の関心にあわせて授業内容を変更する場合もある。