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授業科目名 現代の民族問題
時間割番号 180335
担当教員名 金井 隆典
開講学期・曜日・時限 前期・火・II 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的および概要>
“民族”とは何か?“民族”はなぜ、対立し、争うのか?<BR>近年、「グローバリゼーション」という言葉がよく聞かれます。1990年代の‘東西冷戦構造’の崩壊以後、しばしば登場するこの言葉は、世界がやがては(あるいは、すぐにも)1つになるかのような印象を私たちに与えます。<BR>しかし、テレビやラジオ、新聞のニュースで目にするように、世界には、「グローバリゼーション」とは正反対に見える民族同士の対立や紛争が、今なお溢れています。<BR>「グローバリゼーション」の時代といわれる現代、交通や物流の発展によってヒト・モノの移動の垣根は極めて低くなり、自分とは髪や眼や肌の色が異なる人々が隣人として存在することがごく当たり前のこととなってきました。しかし、同時に、そうした隣人の存在は、私たちに自らとは異なる〈他者〉をつくり出させ、〈われわれ〉−〈他者〉という境界線を引かせもするのです。こうした自-他意識が、現代のナショナリズムを構成し、それが「グローバリゼーション」下の民族のあり様、民族をめぐる問題を規定しています。<BR>したがって、「グローバリゼーション」下にある現代の国際関係や国際問題を考えるうえで、“民族”をめぐる問題についての理解が必要不可欠であり、かつ、現代の民族問題は「グローバリゼーション」の時代を生きる私たちが抱える問題とつながっているということができるでしょう。<BR>そこで、本講義では、“民族”をめぐる様々な問題について、“民族”のあり様と密接な結びつきを有しているナショナリズムとの関係を軸に、“民族”とは何か?や、民族問題の構造と現在を明らかにすることを目的とします。
<到達目標>
本講義では、<BR><BR>(1)民族とナショナリズム、および両者の関係に関する論理、と現代の民族問題の原因・生成・現状に関する具体的な基礎知識の両面の習得を目指します。<BR>(2)民族をめぐる問題を検討することを通じて、「グローバリゼーション」下の様々な政治・社会問題を分析するスキル、社会科学的思考法を身につけます。<BR>(3)ナショナリズム、民族、および両者の関係、そこから生成される民族問題の検討から、「グローバリゼーション」の時代に対応した“他者”との相互理解、相互交流のあり方について自分なりの意見や考えをまとめられるようにします。
<授業の方法>
授業は、基本的に講義形式で進めていきます。<BR>授業期間中に1〜2回程度、小テストを実施します。<BR>出席は毎回、ICカードリーダーによる出席確認と、配布したコミュニケーションペーパーに感想を書いてもらう形でとります。<BR>質問は適宜、受け付けます。皆さんからの質問や提案、要望にはできるだけ応えていきたいと考えています。
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1試験:期末期 50  %講義の内容を理解し、さらに考察力を深めるための試験を実施します。授業理解力と論理的思考能力を評価します。詳細については、第1回の授業で詳しく説明します。 
2小テスト/レポート 25  %講義内容の理解度、考察力・論理的思考力を確認するための小テストを1〜2回、実施します。 
3受講態度 25  %授業に取り組む姿勢(自発的勉学、知的好奇心と探求力)を重視します。 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
授業への積極的な取り組みを期待します。質問や提案、要望がありましたら、どしどし、提出してください。出欠調査と兼用のコミュニケーション・ペーパーに書いてくださってもかまいません。<BR>なお、講義と関係ない私語、授業開始後の教室への出入りの繰り返し等、他の受講生に迷惑となる行為は厳に慎んでください。<BR>また、第1回の講義で講義全体の概要、授業の進め方、成績評価方法などの詳細を説明しますので、できるだけ出席するようにしてください。
<テキスト>
  1. 特に指定しません。適宜、レジュメや資料(プリント)を配布します。
<参考書>
  1. ベネディクト・アンダーソン, 定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行, 書籍工房早山, ISBN:488611508X
  2. 梅森直之, ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る, 光文社, ISBN:4334034012
  3. アーネスト・ゲルナー, 民族とナショナリズム, 岩波書店, ISBN:4000021966
  4. アンソニー・D.スミス, ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察, 名古屋大学出版会, ISBN:4815803552
  5. 谷川稔, 世界史リブレット 国民国家とナショナリズム, 山川出版, ISBN:4634343509,
    (その他、講義の中で、随時、紹介していきます。)
<授業計画の概要>
(以下の授業計画は予定です。皆さんからの要望や諸事情によって変更する場合があります。)<BR><BR>第1回 ガイダンス:授業の概要と目的、授業の進め方、成績評価の方法等の説明<BR>第2回 “民族”とは何か?(1):民族の定義、民族と民族問題の複雑性<BR>第3回 “民族”とは何か?(2):ナショナリズムと民族<BR>第4回 “民族”の両義性(1):ユーゴスラビアのユーゴ人とムスリム人、民族の固定性・不変性と流動性・可変性<BR>第5回 “民族”の両義性(2):「民族浄化」という思想<BR>第6回 産業社会化と“民族”の登場(1)<BR>第7回 産業社会化と“民族”の登場(2)<BR>第8回 産業社会化と“民族”の登場(3)<BR>     :近代以前における“民族”の不在、近代化による“民族”の登場、日本の近代化と「日本人」<BR>第9回 多「民族」から他「民族」へ(1)<BR>第10回 多「民族」から他「民族」へ(2)<BR>第11回 多「民族」から他「民族」へ(3)<BR>      :アメリカにおける民族問題、グローバリゼーションと民族問題の構造<BR>第12回 グローバリゼーションとマルチカルチャリズム(1)<BR>第13回 グローバリゼーションとマルチカルチャリズム(2)<BR>      :民族問題としてのアイヌ問題、マルチカルチャリズムの陥穽<BR>第14回 現代の民族問題の諸相:具体的な民族問題の歴史と現状<BR>第15回 評価:総括・まとめ<BR><BR>以上の過程を通じて、社会科学的な分析・思考方法を身につけ、「グローバリゼーション」の時代に対応した“他者”との相互理解、相互交流のあり方について考える。