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授業科目名  公共性の哲学
時間割番号 180351
担当教員名 本間 信長
開講学期・曜日・時限 後期・金・III 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的および概要>
 現代社会は科学技術の進展やグローバル化の影響で急速に変化しており,市民としてのわれわれは社会の変化への対応が迫られている.今年度は,現代の中心的公共哲学である自由主義とその批判を中心テーマとする.授業では「科学技術」「教育」の側面から,「公共性」問題について考察し,われわれの置かれた状況に対する理解を培う.この授業を通じて,1.現代国家と現代社会の変化がもつ倫理的・政治的意味,2.現代において公共性が問題となっている理由,3.現代の主要な公共哲学の立場を学ぶ.
<到達目標>
 現代日本において市民としての倫理性と自律性を身につける上で重要と考えられる以下の諸点について説明し,自分の意見を述べる能力を育成する.<BR>1.自由主義の変遷,自由主義に対する批判.<BR>2.科学技術と国家および社会の関係性の概容(特に「総合科学技術会議」の意義と問題);科学技術と自由主義の関連性.<BR>3.自由主義及びそれに批判的な立場における「国家と教育の関係」のとらえ方.
<授業の方法>
講義中心で進める.理解度確認のため,復習小テストを実施する.
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1試験:期末期 30  %一定以上の出席者のみに試験を行う.到達目標の1.〜3.についての理解度と応用力を評価するために論述式,記述式試験を行う〈ノート持ち込み可〉. 
2試験:中間期 30  %授業内容の理解度・定着度を見るため授業内容の区切りごとに中間試験を行う〈持ち込み不可〉. 
3小テスト/レポート課題 30  %講義内容を理解し,さらに洞察力を深めるため長文のレポートの提出を求める.課題に対して論理的に自分の意見をまとめる能力を見る.学生が,学習内容をさらに深めた調査・考察をレポートに盛り込むことを期待する. 
4平常点/受講態度 7  %3/4以上の出席は単位取得の不可欠条件となる. 
5発表/表現等 3  %コメントシートなどでの積極性. 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
 「公共性」について共に考えることを通して,私たちが生きている国家・社会が今どのような変化を経験しつつあり,どのような問題があるのかを学び,市民として主体的に対応するための準備の機会としてほしい.<BR> 授業を理解するうえで倫理や世界史の知識があることが望ましいのは確かだが,講義はテキストおよび新聞やテレビの報道を糸口にしながら,できるだけ既存の知識を前提としないで進めていく. <BR> 指示をするので,テキストの該当部分は読んでくるように.なお、昨年度の指定テキストも参考にしてほしい。<BR> 期末試験・中間試験・課題レポートは
<テキスト>
  1. 桂木隆夫, すれっ枯らしの公共心:公共哲学とは何だろう 続, 勁草書房, ISBN:4326154012,
    (受講者は購入し、指示に従って事前に該当部分を読んでおいてください.)

  2. 佐藤成基, ナショナリズムとトランスナショナリズム:変容する公共圏, 法政大学出版局, ISBN:4588602527
  3. 大野誠, 近代イギリスと公共圏, 昭和堂, ISBN:4812209307
  4. 岡本暁子ほか, 科学技術は社会とどう共生するか, 東京電機大学出版局, ISBN:4501624302
  5. 科学技術振興機構社会技術研究開発センター編, 科学技術と知の精神文化:新しい科学技術文明の構築に向けて, 丸善プラネット, ISBN:4863450087
<参考書>
  1. 藤本龍児, アメリカの公共宗教:多元社会における精神性, エヌティティ出版, ISBN:4757142285
  2. 源了圓ほか, 横井小楠:1809-1869「公共」の先駆者, 藤原書店, ISBN:489434713X,
    ((別冊環 17))

  3. 飯田哲也, 公共性と市民, 学文社, ISBN:4762019631
  4. 東大社研著、編, 希望学1 希望を語る, 東京大学出版会, ISBN:413034191X
  5. 東大社研, 希望学2 希望の再生, 東京大学出版会, ISBN:4130341928
<授業計画の概要>
(以下の授業計画は予定です.変更の可能性があります)<BR>第1部「科学技術と公共性」<BR>1. 公共的問題としての科学技術;科学技術と国家の関係:19世紀までと20世紀から(1)(国家と科学技術の結合:知識の私的探求から国家の戦略的技術開発へ)<BR>2. 科学技術と国家の関係:19世紀までと20世紀から(2)(マンハッタン計画)<BR>3. 総力戦と国家と社会:自由主義的国家と社会の分離〜一元的国家 <BR>4. 現代日本の科学技術研究と国家と社会(戦後の状況,科学技術基本法,総合科学技術会議,科学技術基本計画)<BR>5. 科学技術と政治の「機会主義的」関係と20世紀の精神的状況:カール・シュミットの「中性化と非政治化の時代」<BR>6. カール・シュミットの自由主義批判<BR>7. 第1部まとめ(レポート)<BR><BR>第2部 市民と公共性をめぐる19世紀から20世紀への変化(「国民」の形成と「国民」にかかわる公共性問題)<BR>8. 「市民的公共性」について:ハーバーマス(19世紀の自由主義,新自由主義)<BR>9. ロールズ的リベラリズム,リバタリアニズム,コミュニタリアニズム<BR>10. 全体主義との対峙:ハンナ・アーレント(ポリス的公共性への回帰)<BR>11. 第2部まとめ&復習小テスト(持ち込み不可)<BR><BR>第3部「教育と公共性」<BR>12. 学校選択性をめぐる議論<BR>13.「公民教育」と教育基本法の「改正」,「愛国心」をめぐる議論<BR>14. 教育における公共性をめぐる理論的立場<BR>15. 評価:総括・まとめ
[学生による授業評価アンケートに関する記述]
 受講者には共生社会課程以外の学生も多いので現代の科学技術と国家・社会に関する内容をメインテーマである自由主義に関連付けながら盛り込んだ.「学生の参加の機会を増やしてほしい」との意見に配慮し、コメントシートを通して寄せられた学生の質問・意見・感想などをプリントにしてクラス全体で共有することに努める。