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授業科目名  公共性の哲学
時間割番号 180351
担当教員名 本間 信長
開講学期・曜日・時限 後期・金・III 単位数 2
<対象学生>
(未登録)
<授業の目的および概要>
 「公共性の哲学」という科目名に,皆さんは近づきにくい印象を持つかもしれません.確かに,「哲学」というと,それだけで何か難しそうな気がしてくるものです.しかし,哲学というのは,現実の世界の事柄を受け取って,それについて考えてみるということを出発点にするものです.哲学は決して現実から遊離したものではありません.また,自分で考えようとしさえすれば,いつでも,誰でもその出発点に立つことができます.現実の世界のある事柄を受け取って「公共性ということについて考えてみる」のが「公共性の哲学」です.<BR> ところで,「公共性」とは何でしょうか?『大辞泉』には「広く社会一般の利害にかかわる性質.また,その度合い.「―の高い鉄道事業」」,『大辞林』には「広く社会一般に利害・影響を持つ性質.特定の集団に限られることなく,社会全体に開かれていること.」と記されています.しかし,「社会一般」とか「社会全体」というものが,いったいどれくらいの広がりを持つのでしょうか.その中に入る人々はどのようにしてお互いに結びついているのでしょうか.このような事柄にはさまざまな主張がありえます.そして,より重要なことは,私たち一人ひとりの公共性についての見解が,これからの公共性のあり方を形成していくという点です.<BR> 考えるためには材料が必要ですが,それを主に提供するのが補助者である担当者の役割となります.2007年度は,冒頭で『ソクラテスの弁明』を取り上げます.西欧における公共性をめぐる議論の原点だからです.その後,近代,現代へと移り,応用問題として現代の問題を取り上げます.<BR>クラスでは,私の話だけでなく,ビデオなども使いながら,それぞれの人が考えるための材料を提供していきます.なお,昨年度は,当時教育基本法が国会で議論されていたこともあり,具体的に考える材料として義務教育のあり方をめぐる議論を取り上げました.今年度はまだ未定です.
<到達目標>
 前半は,講義内で説明された人物とその思想について一定の知識を得ることが目標で,これは第2回目以降毎回の復習小テストで確認します.<BR> 後半は,講義内容を踏まえて課題に対し自分の考えを述べることを目標とします.これは課題レポートで確認します.
<授業の方法>
 基本的に講義形式をとりますが,ビデオ等もできるだけ多く用いる予定です.<BR> 同じ授業に出ている人同士が意見を共有して共に考える機会も重要で,その様な試みは「公共性の哲学」にふさわしいと思いますので,クラスでディスカッションの時間を設けたいと思っています.<BR> また,毎回授業の終わりに,皆さんの意見や感想を書いてもらう時間をできるだけ設けたいと考えています.共有すべき意見や感想は後で紹介するなどして,皆さんが積極的に授業に参加する機会も広げていきたいと思います.
<成績評価の方法>
No評価項目割合評価の観点
1試験:定期試験 30  %授業内容の理解と定着度 
2小テスト/レポート課題 50  %小テスト20%、レポート課題30%;評価の観点は到達目標参照 
3平常点/出席点 20  %コメントシートへの質問・意見・感想などで積極性も見る 
<受講に際して・学生へのメッセージ>
  「公共性」について共に考えることを通して,現在私たちが生きている社会にはどのような特徴があり,今どのような問題があるのかを学ぶ機会としてもらえばと考えています.<BR> 講義は,新聞やテレビの報道を糸口にしながら,できるだけ既存の知識を前提としないで進めていきたいと思います.<BR> 前半(第1回〜第9回)の知識習得重視期間は,毎回冒頭に前回の復習を内容とする小テストを行います.これは評価の対象となります.
<テキスト>
  1. 安彦一恵・谷本光男編, 公共性の哲学を学ぶ人のために, 世界思想社, ISBN:4790710718,
    (受講者は購入し、指示に従って事前に該当部分を読んでおいてください.)

  2. プラトン, ソクラテスの弁明・クリトン, 講談社学術文庫, ISBN:4061593161,
    (受講者は購入し,第2回までに読んでおいてください.)

  3. バーナード・クリック, デモクラシー, 岩波書店, ISBN:4000268740,
    (参考書扱いです)

  4. ハンナ・アーレント, 暴力について, みすず書房, ISBN:4622050609,
    (参考書扱いです)

  5. ヤエル・タミール, リベラルなナショナリズムとは, 夏目書房, ISBN:4860620585,
    (授業後半の内容に関して示唆に富む.)
<参考書>
  1. 近藤敦編著・駒井洋監修, 外国人の法的地位と人権擁護, 明石書店, ISBN:4750315753
  2. A・ギャンブル 著/内山秀夫 訳, 政治が終わるとき?:グローバル化と国民国家の運命, 新曜社, ISBN:4788508133
  3. Politics and Fate, Polity, ISBN:0745621686
  4. 日本政治学会編, 平等と政治, 木鐸社, ISBN:4833223821
  5. 政治思想学会編, 日本における西欧政治思想研究, 風行社, ISBN:4862580009
<授業計画の概要>
(以下の授業計画は予定です.変更の可能性があります)<BR>第1回    「公共性の哲学」という科目とテキストについて<BR> ☆ギリシャ文明についてのビデオ配布<BR>第2〜3回   ギリシャ世界と公共性:ソクラテスの弁明<BR>第4〜9回   公共性をめぐる歴史(西欧):近代〜福祉国家の見直し<BR>第10回    「第二の近代」の諸特徴<BR>第11〜12回  現代世界と「公共性」<BR>第13〜14回  現代日本と「公共性」